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水張りと水彩画用紙の種類|水彩紙の特徴と吸水性の高い紙

    
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水張りと水彩画用紙の種類|水彩紙の特徴と吸水性の高い紙

こんにちは、NORi です。
今回のテーマは『水張りと水彩画用紙の種類』いついてです。水彩画に適した紙とは一体どのような紙でしょうか。水彩紙を選びたいと思って画材屋さんを訪れてみても、紙の素材や厚み、荒目・中目・細目などと選ばなくてはならないことが意外と多いですよね。

そこで今回は、そんな水彩紙の基本的な特徴についてまとめてみようと思います。紙の性質や構造などを知って、自分の技法に合った紙を選んだり、失敗しない水張りができますように!

NORi

水張りと水彩画用紙の種類|水彩紙とは? 《紙の歴史》

want-to-draw


まずは
人類の『紙』の発見から
遡ってみたいと思います。
 

『紙』の製造技術の発見は
古代中国による四大発明の1つです。

(四大発明の残りの発見は
羅針盤・火薬・印刷です。)
 

古代以前の中国では
天然の植物を利用して
その繊維を紡いで糸を作り

それを織布として
衣類に使っていました。
 

特に【麻】などが
良く使われていたようです。

植物の茎の部分の皮を剥ぎ
さらに皮の内部に含まれている
長くて丈夫な繊維を取り出すのです。
 

その繊維をより合わせて糸を紡ぎ
布を織りました。

この糸を織る工程で
短か過ぎて使えないような
捨てくず繊維が出ます。

そのような捨てくずの繊維が
雨水などに濡れたまま放置され

乾いたときには
いつしか平面状に固まっていることに
気がつきました。
 

そこで
捨てくず繊維を水に良く混ぜて
網の上に抄く(すく)ことで

『紙』を作るという方法が
発見されたそうです。

このように
植物から採れた短い繊維を
水に混ぜて抄紙する
という基本的な技法は

中国古代・後漢王朝で
確立したと言われています。
(中国では【麻】が紙の主原料)

つまり
もともとの『紙』の原料は
布織物のために植物から採取した
捨てくず繊維だったというわけです。
 

【おまけのお話】

『紙(paper)』の語源は
まだ紙の製造技術が伝わる前の
欧州の書記材料の原料名から来ています。

古代エジプトでは
ナイル川上流に自生する
パピルス(Cyperus papyrus, L.)
という多年生植物の

茎から採った繊維を叩き伸ばして
張り合わせて筆記材料に使ってました。

これがPaperの語源だそうです。
 

その後は
羊の皮を薄く伸ばして木枠に張り付け
乾燥させた

羊皮紙(パーチメント)というものが
主な書記材料として使われました。

 

①紙の『強度』とパルプ




紙の強度とはなんでしょうか。
 

そもそも紙の製造は
布織物にも使えないような
捨てくず繊維が

雨水などに濡れ
自然乾燥の後に
平面状に固まることに気が付いて
発見されたものでした。
 

この発見から分かるように
製紙用に適した
繊維の長さというのがあり

布織物の捨てくず繊維と同様
数mm程度の長さ
が良いとされているそうです。
 

紙の強度とは、つまり
その数mm程度の
繊維1本の強度が優れていて

水に不溶でありながら
親水性であり

かつ
化学的に安定である
ということになります。
 

繊維の主成分である
セルロースの構造を見れば

上記の条件をほぼ満たすことが
分かります。
 

植物から採れた繊維や細胞は
パルプ(pulp)と呼ばれています。

たとえば
野菜や果物を丸ごとジューサーにかけて
ジュースを作ったとして

水分以外の
細長い繊維や果肉などをひっくるめて
パルプと言うわけです。
 

18世紀半ば~19世紀にかけて
イギリスで起こった産業革命以降

急速に紙の需要は高まり
大量にある木材の繊維を利用することが
製紙業界における主流となっていきました。

現在は主に
製紙に使用するための植物繊維をまとめて
パルプと呼んでいるようです。
 

木材から採れる木材繊維は
木材パルプと呼ばれ、

木材以外の
麻やコットン、コウゾなどの
植物から採取した繊維は
非木材パルプと呼ばれています。
 

植物繊維の主成分は
いずれもセルロースです。

『紙』の構造として
特に重要なことは

紙を抄いて乾燥させる間に
水を介して繊維同士が
接着剤もなしに結合するということです。
 

この繊維間結合には
セルロースの表面に存在している
水酸基(-OH;ヒドロキシ基)が不可欠です。

抄紙の際の水に浸された繊維は
主成分であるセルロースの水酸基と
水分子がゆるく結合した状態にあります。
 

乾燥につれて
水分子が抜ける際に
水の表面張力と毛管現象とにより

その穴を埋めるようにして
セルロースの水酸基同士が近づいて
強力な水素結合で結ばれることになります。

水酸基を持たない合成繊維では
接着剤なしで
安定的な紙を作ることはできません。
 

セルロースの純度の高い
植物繊維で作られた紙は
丈夫で安定感のある紙になる
ということがわかります。

『水彩紙』においても
様々な植物の繊維を使った紙が
製造されています。
 

②紙の『原料』




繊維1本の強度が優れているためには
原料の質が大切です。

純粋なセルロースパルプを
作ることができる植物であれば
強度に優れた繊維になります。
 

植物から純粋に採取できる
繊維の割合は

針葉樹・潤葉樹と比べて

多年草のコットン(木綿)や
落葉樹のミツマタ(三椏)が
圧倒的に高い収率を誇っています。

その大部分が
繊維で出来ているためです。
 

また採取できる繊維の長さは
コットンが圧倒的に長く

一般的な針葉樹・潤葉樹・落葉樹
の植物に比べて
10倍~20倍にもなります。
 

一般的に採取できる繊維の長さが
長いものほど紙の強度は大きくなる
と言われているようです。

このように
コットン(木綿)は
紙の繊維として理想的な植物といえます。
 

アオイ科ワタ属の多年草植物は
総称して棉(ワタ)と呼ばれ、

花が咲いた後に実がはじけて
中から白い綿があふれ出ます。
 

この綿花を収穫し、
種を取り除いたものを
木綿と呼びます。

木綿は捨てるところが無いほど
ほとんどが純粋なセルロースで
出来ています。

繊維としては伸びにくく丈夫で
吸湿性があって肌触りもよいので

衣類にもよく使われますが
縮みやすいという欠点もあります。
 

また採取できる繊維細胞の
厚みを比べても
コットンの繊維は非常に厚く

他の木材や植物では
太刀打ちできないほどです。

このような繊維の純度の高さが
紙の強度の一番基本的な条件となります。
 

製紙工程として
漂白・叩解・精砕・サイジング・填充・
抄紙・プレス・乾燥など

その後の化学的なパルプ処理の過程や
物理的な製紙工程においては

基本的なパルプの強度を損なうことなく
むしろ
その強度を十分に発揮させることが
目標となります。
 

『水彩紙』においても
セルロース純度が高く強靭で
吸水性の高いコットンは
最も適した紙素材です。

高品質な高級水彩紙のほとんどが
伝統的な製法に倣って
コットン100%で製造されています。
 

③紙の『浸透性』とサイジング




紙の断面構造は
その約半分が
空隙構造になっています。

この構造は
製紙工程を通して形成されます。
 

まず最初に
水に混ざり合った繊維の構造は

主成分であるセルロースが
水分子に囲まれた状態にあります。

そこから
乾燥に伴い水分子が抜けることで
そこに空気に置き換わり

三次元的に複雑に結合した
空隙構造が出来上がります。
 

紙の空隙構造は
水や油を簡単に浸透させます。

毛細管現象によって
液体は紙の空隙に入り込んでいくのです。
 

しかし
『水彩紙』の場合は

際限なく絵具の色が浸透して
にじんでいくようでは困ります。

水で絵が描けなくてはいけません。
 

そのため
にじみ防止のためのサイズ剤を施す

サイジングを行うことが多いです。

水彩紙では
過度のにじみを防止するために

サイジングによって
浸透性を適度に抑えることで

浸透スピードを遅くして
紙の表面の絵の具を筆で移動させて
絵を描く時間的な猶予を作っています。
 

『水彩紙』における
サイジングの強さは
メーカーによって異なりますが、

サイジングが強めの水彩紙では
絵の具はすぐには紙に浸透せずに
ゆっくりと吸水されていきます。
 

絵の具はゆっくりと
紙の内部へと広がっていき
色が定着します。

サイジングで水を弾いたとしても
最終的には
紙の空隙構造に絵の具が吸収され
紙に色が定着する必要があるわけです。
 

『水彩紙』では
適度な撥水性をもちながらも
充分な吸水性も必要というわけです。

コントロールが難しそうですね。
 

④紙の『吸水性』




上の章で出てきたサイジングは
紙の吸水性の高さによる
欠点も補うことができます。
 

紙の主成分であるセルロースは
親水性の水酸基を持つため

通常吸湿性(吸水性)を示します。

水分は繊維の間に入り込み
繊維間結合をゆるめます。

その後
繊維構造が軟化することにより
紙の形状を変形させることになります。
 

このような現象は
ミクロな分子サイズで起こる
可逆的なもので

紙のリサイクルが可能な理由
でもあります。

つまり
防水加工していない紙は
水濡れに弱いということになります。
 

サイジングによって
初めから水をはじく
撥水性(あるいは疎水性)の膜をつくり

意図しない水の浸透を
できるだけ抑えることができます。
 

吸水による
表面での膨張の程度と
厚さ方向への膨張の程度が異なると

紙はいびつにヨレていき
丸くカールします。
 

紙は熱による膨張などは
ほとんどありません。

むしろ
吸水によるサイズ変化(膨張)の大きさが
紙の特徴と言えます。
 

水をたっぷり使う水彩画においては
吸水性の高い『水彩紙』を
使う必要があります。

これはつまり
紙の伸縮は避けられないことを
意味します。
 

水彩画の宿命ですね。
 

⑤紙の『厚み』




紙の吸水性は
厚みによっても決まります。
 

厚みのある紙では
表面の繊維の空隙間構造に加えて

厚さ方向には層状的な構造が
広がっていて

より沢山の水分を
安定的に含むことができます。
 

紙の厚さの指標として
一般的に使われているのが

面積あたりの質量(g/m2
を表す数値です。

正確にはこの値は紙の重さで
坪量(basis weight)と呼ばれていて

紙のように平らな材料の
基本的な量として用いられています。
 

この坪量(g/m2)は
紙の表面方向の強度と
ほぼ正比例の関係を示すため、

紙の厚さの代用として
使われることが多いのです。
 

実際に
紙に水を垂らすと

薄い紙ほど早く簡単に波打ち
水に弱く破れやすくなります。

厚みの紙ほど
その波打ちは穏やかで
耐水性を備えています。
 

『水彩紙』にも
いくつかの厚み(坪量)のバリエーションが
用意されていて

使用する技法によって
適切な紙を選べるようになっています。
 

水をたっぷり使う水彩画では
300 g/m2以上の坪量が
推奨されています。

厚い紙ほど良いといえそうです。
 

⑥紙の『表面』とウォーターマーク

愛用の水彩紙 by NORi



絵を描くときに
大きな影響を与えるのが

紙の表面の
肌目の凹凸ではないでしょうか。
 

紙は繊維の集合体ですが、
その集合構造が紙の表面に現れます。

主な抄紙工程では
調合の終わった紙料を
網で抄きあげてから

プレスで脱水する
という過程が含まれます。
 

プレスで
繊維同士がちょうどよい具合に
密着することによって

乾燥時に作られる
繊維間結合が助長され

密度が高く
表面が平滑な紙が出来る
ということになります。
 

このときの
プレスの具合によって

仕上がりの紙の表面の凹凸が
決まってくるようです。

紙の表面の凹凸が大きい順に
おおまかに3種類に分けられています。
Rough
Cold Press
Hot Press
 

Roughは
表面の凹凸は荒いままに残され
中の空隙間構造も大きいため
吸水は一番早く

ふっくらしっとりした大らかな表現が
得意な紙となっています。

また凹凸を活かしたダイナミックな
筆遣いによる擦れなど
他の紙では出せない表情が魅力です。
 

Cold Pressの凹凸は
標準的な肌目に抑えられており
吸水スピードは穏やかで

ゆっくりとにじみやぼかしなどを
作ることができます。
 

Hot Pressでは
凹凸はかなり潰れて
つるりとした表面になっています。

水をたっぷり使う表現や
重ね塗りなどは難しくなりますが
滑らかな紙質は魅力的です。

緻密な線を描き込むような表現にも
向いています。
 

■ ウォーターマーク

高級水彩紙には
紙のシートの端に紙の名前が
透かしで入っています。
 

この透かしという技術は
紙幣の偽造防止や
紙の製造所の識別、
工芸目的で発達した
と言われています。
 

紙を透かして見たときに
文字や絵柄が
他の地の部分より薄く
透けて見える『白透かし』は

ウォーターマーク
と呼ばれています。
 

ウォーターマーク法は
紙を抄く際に

あらかじめ網に細かい針金で
文様を縫い付けておくことで

その部分の繊維量を少なくして
光透過量を増大させる方法です。

 

⑦紙の『白さ』




情報媒体としての『紙』の白さは
重要です。
 

繊維パルプあるいは『紙』の白さは

繊維抽出の際に出るリグニンという
褐色を呈する物質の残存量と

漂白の程度に依存する
と考えられています。
 

その漂白の程度は
通常「白色度」の測定によって
評価されているようです。

基本的な方法としては
薄過ぎない
300g/m2程度の
厚さの紙を標準として

光(主波長457nm)の反射率を
測定することによって
紙の白色度を決めます。
 

可視光の完全散乱体が
光学的な完全白色です。

『水彩紙』の色は
メーカーによって微妙に違いますね。
 

水張りと水彩画用紙の種類|透明水彩と水彩紙




ここまで
紙の歴史から遡り

紙の成分や構造とともに
科学的な特徴について
まとめてきました。
 

わたしは透明水彩で
絵を描くことが多いのですが、

透明水彩は紙にとって
かなり過酷な技法だと
感じています。


水に弱い『紙』に
水で絵を描くわけです。

日本においても
『和紙』と墨という
コンビネーションがあります。
 

和紙の製造は
コウゾやミツマタの樹皮から
得られる長い厚い繊維を使って

流し抄きと言われる
日本独自の方法で
薄く抄紙が行われているそうです。
 

和紙は
薄くても丈夫な紙の
代表的な例といえます。

コウゾの繊維の特徴が
和紙の独特のにじみを生んでいると
考えられます。
 

一方
透明水彩は

紙全体を水で濡らす
ということを何度も繰り返します。
 

それでも
美しいにじみや
色の重なり合いを保ち

紙のヨレを作らずに仕上げる
となると

どうしても紙を選ばなくては
なりません。
 

紙の基本的な性質を知ることで

透明水彩の技法に合った
『水彩紙』を選ぶことが
できそうです。
 

①波打つ理由




水をたっぷり使う透明水彩において
吸水性の高い良質な紙を選ぶことは
とても大切です。
 

しかし
紙の吸水性はそのまま
紙のヨレや波打ちを引き起こす
原因にもなります。

紙の繊維が
水をたっぷり吸収する反面

紙の繊維間構造はゆるくなり
紙は伸びたりヨレてしまうのです。
 

これは避けることはできません。

紙の吸水(吸湿)および乾燥による
紙の伸縮は避けられませんが、

丈夫な紙であれば
伸縮による紙のダメージは最小限に
抑えることができます。
 

丈夫な紙というのは
コットン素材の厚みのある紙です。

たっぷりの水も吸収して
しかも
紙が破れたり
傷んだりしない

そんな丈夫な紙が理想です。
 

その鍵を握るのが
植物繊維の主成分である
セルロースの量と

繊維1本あたりの強度です。
 

親水性のセルロースを
豊富に含む厚手の紙で

繊維の強度が高い
コットン素材の紙ならば

吸水性と強靭性を
兼ね備えることができます。
 

コットン素材の厚手の紙
というのが

透明水彩において
理想の『水彩紙』となります。
 

②波打たないために




吸水性の高い紙が
水を吸収して波打つ性質を

むしろ利用することで

制作中に波打たない状況を作る
という方法がすでにあります。
 

その方法が【水張り】です。
 

紙は水に濡れると伸びて
乾くと縮みます。

その性質を利用すると

紙を水に濡らすことで
乾燥した通常の紙のサイズよりも
伸びて広がった状態の紙を
簡単に作ることができます。
 

その状態で
板に張り付けて
しっかり固定してから
そのまま自然乾燥させれば

紙の繊維の中から
徐々に水分が抜けていき
紙は勝手に縮もうとします。
 

紙はしっかりと固定されているため
紙のサイズは変わらずに
繊維自体は縮もうとするため

紙の表面が引っ張られるよう
ぴーんと張った状態で
紙が乾燥するというわけです。
 

これは
濡れた紙をそのまま放置して
乾燥させるのとは違って

肌目が均一に揃った
平滑で美しい紙に仕上がるため

作品としては
理想的な紙の状態といえます。
 

制作中は水に濡れたり
多少紙の伸縮があっても

完全に乾いた完成作品が
このような仕上がりになるので
水張りは大変有効といえます。
 

また、
水張りでは
あらかじめ紙を伸ばしてから
板に固定するので、

制作中の紙の伸びや波打ちも
気にならずに

綺麗な紙の状態で絵が描けるので
一石二鳥なのです。
 

水張りと水彩画用紙の種類|透明水彩のための水張りのコツとは?




水張りも
目的によって方法は
いくつかあります。

ですが
透明水彩に関しては

一番の目的を押さえておかないと
水張りに失敗することもあります。
 

透明水彩は
紙にとって本当に負担が大きく

水張りの効果を
最大限に活用しなければならない
技法なのです。
 

透明水彩においての
水張りの一番の目的
かつ
最大の効果とは

制作中に紙が波打たないことです。
 

紙が乾燥した際の
仕上がりの紙の美しさは
おまけで付いてくるので
ここを目的にしてはいけません。

水張りの失敗例を
先に挙げておきますと

仕上がりの美しさだけを目的にした
水張りをしてしまうと

透明水彩においては
不十分な水張りになってしまいます。
 

不十分な水張りでは
制作中に紙が波打ってしまい

紙の上で絵の具が水溜りのように
溜まってしまったり

紙のヨレに沿って
絵の具が流れてしまったり

絵の具を上手に操れる状況では
なくなってしまいます。
 

それでは
透明水彩にとっての
充分な水張りのコツ
とはどのようなものでしょうか。

それは
紙を濡らして紙を伸ばす際に

紙が完全に伸び切るところまで
しっかり吸水させることです。
 

紙が完全に伸び切るために必要な
水の量と吸水時間ということを
確認しておく必要があります。

例えば
比較的吸水スピードが緩やかな
ARCHESの水彩紙の場合でも

紙を水に浸した状態で
15分〜20分放置すれば
ほぼ完全に伸び切ることが
分かっています。
 

片面15分〜20分
ひっくり返して
反対側15分〜20分

両面で30分〜40分
水に浮かべて放置すれば

完全に伸び切った状態で
水張りをすることができます。
 

これが
水の量と吸水時間の両方を
クリアする

充分な水張りのコツになります。
 

■ 平張りの流れとコツ

平張りの様子 by NORi



水張りのスタイルは2つあって

『平張り』と『パネル張り』
と呼ばれています。
 

ここでは
簡単な『平張り』について
おおまかな流れをご紹介します。

基本的な水張りの流れは

  1. 紙が完全に伸び切るまで吸水させる
  2. その状態で板に紙を張り付け固定する
  3. 一度完全に乾かす

です。
 

実際の様子を見ながら
説明したいと思います。
 

①紙が完全に伸び切るまで吸水させる

洗面台で吸水させているところ by NORi



充分な水の量と吸水時間をかけて
紙に吸水させるため

刷毛や
霧吹きで水をかけるのではなく

洗面台に水を張って紙を浸水させ
自然にまかせて吸水させる方法を
とっています。
 

タイマーで15分セットしています。
ひっくり返して
また15分放置します。
 

②その状態で板に紙を張り付け固定する

水張りテープで貼っているところ by NORi



濡れたままの紙を
板にしっかり張り付けるには
専用のテープが必要です。
 

上の画像の緑のテープが
【水張りテープ】と呼ばれるもので

強力な糊がついたテープです。
 

水張りテープは
一度水に濡れると
すぐに糊が溶け出しますので、

板に紙を貼り付ける直前に
水張りテープの糊面に
水をつけます。
 

湿気で糊が溶けないように
ビニール袋に入れたまま保管します。
 

キッチンペーパーなどで
余計な水分を取り除くようにして
テープの上から軽く押さえながら

テープの糊がしっかりと
紙と板に密着するようにします。
 

紙の四辺すべてを固定します。
 

③一度完全に乾かす

乾かしているところ by NORi



平らなところに置いて
自然乾燥させます。
 

このとき
直射日光やドライヤーに当てて
急激に乾燥させるのは避けた方が
良いと思います。

部分的に乾燥が早まって
紙がヨレたり破れたりすることが
あります。
 

完全に乾くと
テープの強力な糊が
紙と板をしっかり固定して

紙の表面がぴーんと張った状態で
仕上がります。
 

この状態で
絵を描いていきます。
 

このようにして
水張りした水彩紙は

水をたっぷり使った透明水彩でも
波打つことなく

紙は吸水性を発揮して
透明水彩らしい表現が可能です。
 



 

■ パネル張りの流れとコツ

パネル張りの様子 by NORi



ここからは
もう一つの水張りのスタイルとして

ちょっとお洒落な『パネル張り』
について
おおまかな流れをご紹介します。

基本的な水張りの流れは

  1. 紙が完全に伸び切るまで吸水させる
  2. その状態で板に紙を張り付け固定する
  3. 一度完全に乾かす

です。
 

実際の様子を見ながら
説明したいと思います。
 

①紙が完全に伸び切るまで吸水させる

洗面台で吸水させているところ by NORi



この工程は
水張りのスタイルに関わらず

充分な水の量と吸水時間をかけて
紙に吸水させることがポイントです。
 

充分な水の量と吸水時間をかけて
紙に吸水させるため

刷毛や
霧吹きで水をかけるのではなく

洗面台に水を張って紙を浸水させ
自然にまかせて吸水させる方法を
とっています。
 

タイマーで15分セットしています。
ひっくり返して
また15分放置します。
 

②その状態で板に紙を張り付け固定する

ガンタッカーで貼っているところ by NORi



『パネル張り』では
板を包み込むようにして
紙を張り付けて

板の裏側で紙を固定します。
 

そのため
【水張りテープ】では力不足で

かわりに
【ガンタッカー】という
大型のホチキスを使います。
 

紙の四辺すべてを固定します。
 

角の部分の
紙の折り込みの仕上げは
多少工夫が必要かもしれません。
 

③一度完全に乾かす

乾かしているところ by NORi



平らなところに置いて
自然乾燥させます。
 

このとき
直射日光やドライヤーに当てて
急激に乾燥させるのは避けた方が
良いと思います。

部分的に乾燥が早まって
紙がヨレたり破れたりすることが
あります。
 

完全に乾くと
テープの強力な糊が
紙と板をしっかり固定して

紙の表面がぴーんと張った状態で
仕上がります。
 

角の仕上げなども
濡れていた時よりも
しっくりと板に馴染み
収まりも良くなります。
 

この状態で
絵を描いていきます。
 

このようにして
水張りした水彩紙は

水をたっぷり使った透明水彩でも
波打つことなく

紙は吸水性を発揮して
透明水彩らしい表現が可能です。
 




水張りと水彩画用紙の種類|まとめ

want-to-draw


  • 紙の強度は紙の繊維となる原料と、紙の厚みによって決まってきます。
  • 吸水性の高さが利点の水彩紙には、吸水によって紙が波打つという欠点もあります。
  • 特に波打ちが問題となる透明水彩では、あらかじめ紙が完全に伸び切るように吸水させて水張りすることで、吸水性の利点と仕上がりの美しさの両方を得ることができます。


今回は紙の歴史や製造方法、紙の特徴などをまとめてみました。こうやって丁寧に造られていることを思うと、水彩紙がより愛おしく感じられるのは私だけでしょうか。

NORi




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