『絵の具を100色買いました。』は、圧倒的な美しさを誇る透明水彩に特化した学びサイトです。透明感あふれるみずみずしい絵を描くための基本的な知識や色彩科学の視点に基づいた実践的な技術などwatercolorist NORiがご紹介していきます。

透明水彩とは?|絵の具の特徴・技法の種類・道具選びまで

    
\ この記事を共有 /
透明水彩とは?|絵の具の特徴・技法の種類・道具選びまで

こんにちは、NORi です。
透明水彩の魅力はやはり、透明感あふれる色の美しさやみずみずしさではないでしょうか。ふんわりと柔らかく広がった色が、繊細に重なっていく様子は本当に綺麗ですよね。

今回は、そんな魅力あふれる美しい透明水彩の技法を習得する上で、知っておきたい基本的な事柄をご紹介してみようと思います。

NORi

目次

■ 透明水彩とは|小学校で使う絵の具と違うの?




水彩画というと、
小学校の美術の授業で初めて絵を描いた
という記憶をお持ちの方も多いと思います。
 

そんな私達の馴染みの深い「水彩」と
「透明水彩」とは何が違うのでしょうか。
 

今回はそんな最初の疑問から
取り上げてみたいと思います。





文房具屋さんや画材屋さんに行くと
「透明水彩」というコーナーがあり、

透明水彩のための専用の絵の具
というのがあります。
 

一方で、

学校教材として
馴染みのある水彩絵の具は、

1950年(昭和25年)に
サクラクレパスによって開発された
「半透明」水彩絵の具で、
 

マット水彩絵の具と呼ばれています。




マット水彩開発秘話。

水彩画は誰でも簡単に始められる
そんなイメージがありますね。
 

実際に、
絵の具を水で溶くだけで

筆一本あれば
真っ白い紙の上に
自由にのびのびと
美しい色が塗れるのですから、

子供達に筆で絵を描く楽しみを
伝えるにはちょうど良い画材
かもしれません。






ですが日本では水彩というと
「透明水彩」を意味していました。

 

「透明水彩」は水彩絵の具の
透明度を生かした技法で、

専用の「透明水彩絵の具」が
用意されています。



透明水彩絵の具というだけあって
色を塗り重ねると下の色が透けて見え、
そんな色の重なりの美しさが魅力です。






その透明度の高さから
一旦塗り間違えると修正が効かない
という難しさもあります。
 

やり直しが難しいのは
子供達が楽しむには
ちょっとマイナスになって
しまうかもしれませんね



そういったわけで、

「透明水彩絵の具」は
塗り方にコツがいるため

はじめて水彩画に触れる子供たちには
少し難しいと考えられたようです。






そこで、
透明水彩絵の具を「不透明化」する
という試みがなされたそうです。

その結果生まれたのが、
マット水彩という半透明水彩絵の具でした。



この半透明水彩絵の具は
多めの水で薄めると
「透明水彩」のような表現もでき、

水を少なめにして溶くと
「不透明水彩」の技法が使えるものでした。






透明感あふれる色の重なりの美しさは
創作工程が見える楽しさや色彩感覚を
直観的に育むことができます。

 

このような水彩ならではの「透明性」と
失敗をしても修正ができる「不透明性」の
相反する課題がクリアされ、

子供達は失敗を恐れずに水彩画を
のびのびと楽しめるようになったのです。

素晴らしいですね!!!


🔻関連記事

透明水彩と不透明水彩|絵の具の違いと難点《混ぜるも可》

🔻関連記事

J.M.W.ターナー|天才水彩画家の重色発見と英国絵画の変遷






■ 透明水彩とは|水彩絵の具の種類について




というわけで、
水彩画の絵の具といっても

透明」「不透明」「半透明
という3種類の絵の具を

お店の絵の具コーナーで
見かけることになったわけです。



そして、
「透明水彩」用の絵の具は
特別に透明度が高い絵の具
に分類されます。
 





透明水彩の「透明」の意味。


透明水彩絵の具の一番の特徴は
透明度の高さです。
 

ところで
絵の具の透明度というのは
どのように作られているのでしょうか。

 



これは
絵の具の成分その混ぜ具合で決まっています。
 

絵の具はもともと
色の素となる顔料

その顔料を均質にして
紙などに固定させるための糊剤(樹脂や油)

が主な成分となっています。
 



画法は糊剤で決まる。


顔料(色)を固定するための
糊剤の種類によって
画法が変わります。

 

糊剤がならば、油絵、
糊剤がならば、テンペラ画、
糊剤がならば、日本画、

といった具合です。
 



20世紀にはアクリル合成樹脂
糊剤に採用され、

新素材であるアクリル絵の具によって
新しい表現が生み出されています。
 

水彩画の糊剤はというと、

アカシア科の木の樹脂
アラビアゴムです。
 



この植物から得られる樹脂は
簡単に水に溶け、

腐敗も少ないのが特徴です。
 

アラビアゴムは
水彩絵の具を支える
重要な糊剤というわけです。
 



透明水彩の透明感の決め手。


水彩絵の具の中に含まれる
アラビアゴムと顔料の割合によって

絵の具の透明度が決まります。
 

透明水彩」の絵の具には
含まれるアラビアゴムの濃度が高く、

アラビアゴムの濃度が低いと
顔料の粒子の密度が高くなり
不透明」な絵の具になります。
 



実際に、
線を引いた紙の上に
絵の具で色を塗ってみると、

透明水彩絵の具では
下の線が透けて見えますが、

不透明水彩の絵の具では
線がかなりカバーされて
見えにくくなります。


🔻関連記事

透明水彩と不透明水彩|絵の具の違いと難点《混ぜるも可》






■ 透明水彩とは|強い水彩画用紙が必要な理由




透明度の高さ
透明水彩絵の具と呼ばれる所以ですが、

そんな透明水彩絵の具を使って描かれる絵は
どのような絵になるのでしょうか。
 

透明水彩では、
絵を描く下地としての紙すら作品の一部
になるほどの透明感を生かした塗り方が
できるのが特徴です。
 

🔻関連記事

動画で楽しむ水彩画技法|絵の具を塗る順番と制作の全工程





水をたっぷり使って薄く溶いた色を
少しずつ重ねるようにして絵を描いていくと
淡い色彩が幾重にも重なり本当に美しいです。
 

透明水彩では
水をたっぷり使っても
へこたれない紙を選ぶことが大切です。



つまり、
透明水彩では絵を描くより先に
紙の選定から作品づくりが始まっています


🔻関連記事

水張りと水彩画用紙の種類|水彩紙の特徴と吸水性の高い紙


水彩紙を選ぶ|おすすめの種類と条件《有名メーカーの比較》


水彩画用紙サイズ一覧(500号まで)|おすすめアルシュ紙の種類と選び方







紙がふやけて絵が描けない!


水彩画用紙といえども
水をたっぷり含んだ絵の具で絵を描くと
紙はふやけて凸凹になってしまいます。

水に対する強度の違いもあって
画材屋さんには沢山の水彩紙が
並んでいます。



水に強い水彩紙を選んできたとしても
水をたっぷり含んだ絵の具で絵を描くと
やはり紙はふやけて凸凹になってしまう
ことがあります。

「ことがある」というのは
人によって使う水の量が違うからです。
 



素晴らしい絵を描くためには、
自分が素晴らしいと思う表現で絵を描くこと
これが大切です。

紙がうねってしまう場合は
紙がうねらない方法がちゃんとありますので
安心して下さい。
 



水張りの方法


それは、水張りというものです。



絵を描いている間に紙がうねらないように
事前に紙を板にしっかり固定しておく方法です。

透明水彩は比較的水を多く使うので、
水張りをして絵を描く方が多いと思います。



水張りにもいろいろな固定方法があって、
以下に水張りの方法をいくつかまとめました。


🔻関連記事

水彩画用紙の水張り|基本の平張りの簡単なやり方《霧吹き・刷毛不要》


透明水彩のための水張りとは?|基本の平張り手順6STEP


透明水彩のための水張り時間|失敗しないコツは焦らず30分!





■ 透明水彩とは|透明水彩の技法あれこれ



透明水彩は
水をたっぷり使う技法です。

筆によるタッチだけではなく
水によって絵の具が自然に動く
「にじみ」や「ぼかし」の効果が
紙の上で表現できる
という特徴もあります。
 

  • 透明水彩絵の具を薄く溶くことで、何度塗り重ねても透明感を失わずに美しい色の重なりが表現できる
  • 水によって絵の具が広がる効果を使って、ゆっくりと時間をかけた滲み(にじみ)やぼかしといった色の濃淡を表現できる
  • 一度塗った絵の具も、ある程度は水で濃度の再調整ができる


このような特徴を活かした表現が
透明水彩ならではの柔らかな雰囲気を
一層引き立てます。


🔻関連記事

動画で楽しむ水彩画技法|絵の具を塗る順番と制作の全工程





透明水彩の基本技法:ぼかし・にじみ



透明水彩は
水をたっぷり使った絵の具の濃淡の表現や
異なる色の混ざり合いなどを
うまく活かした技法といえます。
 

水溶性の絵の具を使った表現として
基本的なものに

「滲み(にじみ)」「ぼかし」
があります。
 

これらの技法は
絵の具の混ざり合い、

あるいは
絵の具同士の混ざり合い

といった
自然の現象を活かした手法です。
 

実際には
これらの技術を複合的に活用して
絵を描き進めていくことになります。

🔻関連記事

【パンジーの水彩画】花の描き方と簡単試し塗り《動画つき》





ぼかし



ぼかしは、
絵の具の濃淡を綺麗に出す技法です。
 

紙の上に
水で溶かした絵の具を
ちょんと置いてから、

筆をいったん綺麗に洗い、
 

その筆に綺麗な水だけを少量含ませて
紙の上に置いた絵の具の端っこ(境界)を
水でぼかしながら伸ばし広げます。
 

筆に含まれた水分によって
絵の具をぼかすことができ

色の濃淡による
グラデーションをつくることができます。

これが【ぼかし】の技法です。
 




滲み(にじみ)



紙に塗ったばかりの絵の具の上から
水を少し垂らしてみると

水が一気に広がって
絵の具と水が混ざり合い
滲みが生まれます。


逆に
まず水だけで紙の表面を湿らせてから

そこに絵の具を垂らしても
同様に滲みが生まれます。
 



絵の具と水の 2 種類の液体が
突然隣り合って置かれる状況を
意図的に作ることによって、

絵の具と水の自然な混ざり合いから
ドラマティックな模様を生み出すことが出来ます。



水と絵の具の境界では
自然の原理が働いて、
水は
絵の具の方へ広がり、

絵の具は
水の方へと広がります。
 

この広がり方は

2 種類の液体の量の違いや
濃度の違いによって変わります。

 



2 種類の液体の成分は
均質な 1 種類の混合物になろうと

自然に
互いに混ざり合います。



このような自然の働きを生かして
絵の中に「ぼかし」を加えることで、

ふんわりとした色のアクセントや
水彩画ならではの美しい表現が
可能になります。
 





異なる色でつくる滲み。



実際に絵を制作していくと、
複数の異なる色を隣り合わせにして
にじみを作る
こともあります。
 

異なる色の組み合わせや、

濃度にある程度の差がある
同じ色相の組み合わせでも

美しいにじみを作ることができます。




水によって絵の具が動く効果を
絵画に固定することができるのは、

水溶性の絵の具ならではの表現
といえます。


🔻関連記事

動画で楽しむ水彩画技法|絵の具を塗る順番と制作の全工程





■ 透明水彩とは|絵の具・紙・筆えらび。



すでにお伝えしてきましたように、

透明水彩では
透明度の高い絵の具

紙とのコンビネーション
とても大切です。
 

ここからは、
透明水彩をはじめる第一歩として
おさえておきたい

「絵の具」と「紙」えらびのポイント
もう少し具体的にご紹介します。


「筆」えらびについてもお伝えしていきます。





① 絵の具の選び方

透明水彩の絵の具には
「透明水彩絵具」というジャンルがあり、

ほとんどの文房具屋さんや画材屋さんに
置いてあります。
 

また、

絵の具には
液体タイプ固形タイプがあります。

小学生の美術の授業でもおなじみの
液体タイプ(チューブ式)

はじめは使いやすいと思います。




透明水彩絵の具のメーカーも
色々ありますが、

初心者の多くは

  • ホルベイン

  • ウィンザー&ニュートン

のどちらかの絵の具を使って始められる方が
ほとんどではないかと思います。
 



高い品質で定評のある
日本メーカー「ホルベイン」の
透明水彩絵具18色セット
あたりをまずは購入して、

水彩画をスタートされるのが安心かなと
個人的には思っています。

🔻関連記事

透明水彩絵の具の使い方|色の塗り方・塗る順番・パレット


ホルベイン透明水彩|色見本30色《色番号・廃盤色の作り方》





パレットについて


絵の具を購入する際に

18 色分の絵の具を収めることができる
パレット
も一緒に買って、

そこに18色の絵の具を
収まるだけたっぷり出して

パレットの準備を進めるのがおすすめです。
 

18 色もあると
色々な絵に挑戦できますし、

綺麗な色で安心して絵が描けるので
おすすめです。

とてもきれいな発色ですよ。



透明水彩の美しさに魅了されて
絵をはじめた私は、

この絵の具の美しさを見て
あらためて感動し
本当に楽しく絵を続けることができました。

🔻関連記事

透明水彩絵の具の使い方|色の塗り方・塗る順番・パレット





絵の具は後から買い足せる。


描く絵の幅が広がってくると、

モチーフに合わせて
ちょっと違った色を出してみたい!
という気持ちになるかと思います。
 

絵の具は
1 色ごとバラ売りをしていますので、

次の作品のモチーフが決まったら
自分の気持ちにぴったり合う
新しい絵の具の色を

少しずつ買い足していくのも
絵を描く楽しみの一つだと思います。



ホルベインの透明水彩絵の具だけでなく
色々なメーカーの色を購入してみて
どの色が一番自分に合うかを
試してみることで

自分が描きたいと思う絵にも
しっくりくる色が見つかります。



英国王室御用達の最高級水彩絵具
ウィンザー&ニュートン
(プロフェッショナル・ウォーターカラー)
の絵の具も素晴らしいです。
 

ホルベインも
ウィンザー&ニュートンも

ほとんどの日本の文房具屋さんや
画材屋さんに置いてあると思いますので、

気軽に色の違いを楽しめると思います。





② 水彩紙の選び方



絵の具の発色は
紙によって劇的に変わることがりあります。
 

絵の具と紙の相性というものもあって、
紙の選び方もまた
絵の表現に大きく影響します。



透明水彩では紙選びが大切です。
 

例えば私は、
アルシュというコットン100%の
フランス製の水彩紙
をよく使っていますが、

吸水性はもちろん、
マスキング洗い出しといった
様々な技法にも耐える頑丈な紙です。



私は初心者の比較的早い段階で
透明水彩における紙の重要性を
教えていただくことができたため、

最初の頃に描いた小さな絵でも
アルシュの紙で描いていました。





さすが世界中の画家さん達が愛用した
水彩紙だけあって、

ものすごく発色が美しく綺麗に仕上がって
とても嬉しかったのを覚えています。



アルシュは特に丈夫な紙なので
他の紙に比べて修正もきく方です。

そのため、
あまり失敗せずに様々な技法に挑戦したり
発色の美しさに感動しながら
絵を描く経験を積み重ねることが出来ました。


🔻関連記事

水彩紙を選ぶ|おすすめの種類と条件《有名メーカーの比較》





好きな画風に挑戦できる紙を選ぶ


ただ、
どの紙にも特徴があり、

それがメリットにもデメリットにも
なり得ます。
 

そこでおすすめしたいのは、

自分が描いてみたいと思う絵を描いている
憧れの作家さんがいたら、

その人と同じ水彩紙で描くことです。
 

紙が違ったら
その人と同じ絵は描けないくらい、

紙の選定は
絵の仕上がりを大きく左右することがあるのです。


🔻関連記事

大人の水彩画教室選び|初心者さんが絵を習うための第一歩





また、
水彩画用紙には厚さが選べるものが多く、

水をたっぷり使った透明水彩の美しさを
しっかり表現するには、

300g / m2 の厚みは欲しいところです。

🔻関連記事

水張りと水彩画用紙の種類|水彩紙の特徴と吸水性の高い紙





すでにお話ししたように、
紙は水にぬれると波打つため、

制作に入る前に水張りをして
あらかじめ紙をしっかり伸ばしておく作業も
必要になりますが、

水張りをしないで使うことができる
ブロックタイプのスケッチブック
というものもあります。

🔻関連記事

水彩紙に水張りはいらない?|水張りしない絵のはじめ方

🔻関連記事

透明水彩画のための水張りとは|基本の平張り手順6STEP






③ 筆の選び方



透明水彩を描く道具として、

基本的には
まずは「筆」を選ぶことになると思います。
 

スポンジを使ったり、
時には塩を使ったり、

表現の幅を広げてくれる道具は
色々ありますが、

ここではまずは「筆」について
取り上げてみたいと思います。




透明水彩は水をたっぷり使い
のびのびとした表現が特徴なので、

水の含みのよい
天然の毛を使った筆を用意すると
描き心地もスムーズです。




特に、
コリンスキー(イタチ)の筆は
水の含みが大変よく

弾力のある塗り心地が水彩画にはぴったりで
大変おすすめです。





揃える筆の本数について



絵を描く上で、
描きやすい筆を
何本か揃えておくとよいです。

もちろん描きたい絵の
モチーフやサイズによって
使いたい筆は変わるかもしれませんね。



ですが、
自分にとって描きやすい筆の太さ
というものが出てくると思いますので、

基本的には
自分の描きやすい太さを中心に
細かい部分を描く細い筆
少しゆったりと広い面を塗れる太い筆まで
何本かバリエーションを持たせて
用意しておくとよいです。





はじめて購入される方は
(マネできる先生がいない場合)

使いやすそうな筆を
2 本選んでみることをお勧めします。

  • 基本となる筆(6 ~ 12号あたり)
  • 細目の筆(0 ~ 2号あたり)


まずは絵を始めてみないと
なかなかピンとこないことも多いと思いますので、

試しながら「自分にとって描きやすい筆」を
探していく

という感じが良いのではないかなと思います。
 



自分の技術力の成長によって
筆の選び方も変わってくるかもしれませんね。


🔻関連記事

透明水彩画|初心者さんのための独学で始める厳選道具一式


目的別おすすめ水彩画道具の選び方|水彩筆・絵の具・紙





■ 透明水彩とは|塗る順番と待ち時間。




「にじみ」や「ぼかし」といった
水溶性の絵の具ならではの技法は

水彩画らしい表現を生み出してくれます。
 

このような
ひとつひとつの技法を活かしながら

透明感あふれる絵に仕上げるには
どうしたらよいのでしょうか。

 



透明水彩では
塗る順番や待ち時間を
うまく取り入れていくことが大切です

 





塗る順番

まずは、

絵をどのような順番で塗るか?
という視点が大切です。

 

一度塗った絵の具も
やはり水に溶けるため、

塗り重ねていくうちに紙の上で色が混ざり
濁った色になりやすいからです。



これを避けるためには、
色を塗る順番がとても大切です。
 




実際には、
先に「にじみ」や「ぼかし」を
完成させておきたい場合もあれば、

最後に「にじみ」や「ぼかし」で
絵の全体をまとめたい場合も出てきます。
 

そんな時でも、
最初は薄めに塗っていくことが
失敗しにく方法です。




薄い色で塗っていけば、
途中で少し塗り間違えた時も
ティッシュで吸い取ることも
洗い出しで修正することも
できます。

 

修正が難しい透明水彩では
失敗しないで絵を完成させる
という意識がとても大切です。





透明水彩に明確な塗り方がある
というわけではないのですが、

色々な描き方に挑戦していくうちに
塗り方だけでなく塗る順番によっても
作品の仕上がりが変わることに
気が付きます。


自分なりの表現を
自由に追求するのは楽しい事です。

🔻関連記事

ひまわりの水彩画|黄色もいろいろ?《色選びと制作動画》

🔻関連記事

ザクロの水彩画|果物の描き方と補色 〜色彩科学のお話〜





塗るタイミングと待ち時間

塗り方の順番はいろいろありますが
色を重ねるタイミングも大切です。
 

混色でどんどん絵を展開していく
ダイナミックな塗り方の場合には、

絵の具の水分量や
紙の濡れ具合などを
把握しながら進めます。
 

水の量をどれくらい筆に含めればよいか
といったことが経験的にわかってくると

テンポよく
塗り重ねられるようになっていきます。

🔻関連記事

動画で楽しむ水彩画技法|絵の具を塗る順番と制作の全工程




一方で、
時間をかけてゆっくりと美しい色を
薄く丁寧に塗り重ねていく重色

の技法によって生まれる
豊かな色彩もまた
透明水彩の魅力の一つです。


🔻関連記事

透明水彩絵の具|肌色の作り方~おすすめ混色3選と重色~







重色と乾かす時間。



重色の技法では
待ち時間が特に大切です。

 

何度も塗り重ねる重色では、

色が濁らないようにすることが
重要です。
 

紙が濡れているうちに
色々な色を塗り重ねると

先に塗った色が溶け出して
何度も紙の上で混ざり合うことで
色が濁ってきてしまいます。
 

ひと塗りごとに
完全に乾かすことが大切です。
 



この時間が待てずに
ついつい塗り重ねてしまい
色が濁る
というのを避けるために

色々なところを同時に塗り進める
方法がおすすめです。

 

ほかのところを塗っているうちに
さっき塗ったところが乾いて、

乾いたところから
また塗り進めることで、

また、さらに塗ったところが乾き、
・・・
という循環がうまくつくれて

待ち時間を持ちながらも
塗る作業がはかどります。
 



透明水彩は
塗り重ねによって濁った色を
修正すること
は難しいので、

美しい色をキープしながら
色を重ねるためにも

しっかり乾燥させることが大切です。
 





■ 透明水彩とは|立体感と色の関係を知る



水彩画というと、
淡い色でふんわりと色が広がった
優しい色彩を思い浮かべる方も
多いと思いますが、

少ない色数でも
色の濃淡を巧みに使って
しっかりと立体感が感じられる
迫力のある水彩画
もあります。




リンゴやブドウといった果物も
瑞々しい色調だけでなく
ぷりっとした丸みのある立体感があると

より一層そのフルーツを
美味しそうに見せてくれます。
 

また、
海辺の景色などを描いた作品でも

美しくひろがる
透明感のある青い色だけでなく、
 

遠くにうっすらと見える山並みや
近くの砂浜を散策する人の影など

遠近感のある景色全体の様子が
薄く塗られた絵の具だけで表現できることに
本当に感嘆してしまいます。
 




そのような立体感や遠近感といった
絵の描写を色だけで表現するには

どうしたらよいのでしょうか。
 

その一つのヒントが
色彩原理を学ぶことです。
 

まずは、
明度(めいど)について
取り上げてみたいと思います。
 




明度:Value(ヴァリュー)



一つの色で
濃淡のグラデーションを作ってみると、

それだけで立体感のようなものを
感じとることができます。
 

例えば、
蝶々結びした真っ赤なりぼんを描くとき

りぼんは真っ赤ですから
真っ赤の絵の具で塗れば
赤いりぼんが描けますが、
 

りぼんを良く見ると、

りぼん全体に光のグラデーションが
あることがわかります。
 




光が当たった
りぼんの明るい部分を意識して、

綺麗な真っ赤の絵の具 1 色で
濃淡のグラデーションを作るだけでも

りぼんの立体感
表現することができるわけです。
 

このときに塗った色の濃度の違いは
明度の違いと対応しています。
 




りぼんの明るい場所には
絵の具を薄く塗ったように、

濃度の薄い色は
明度が高い(高明度)といいます。

濃度の濃い色は低明度といいます。


🔻関連記事

水彩画の影の塗り方|陰影の付け方とグリザイユ技法の応用







紙の白さを生かすとは?


最高の明度は白です。
 

一番明るいところは
白く見えます。
 

これを水彩に応用すると、

りぼんに光の当たっている場所は
赤い絵の具を薄く水で溶いて
薄く塗るということになります。




つまり、
使う紙の白さが
その絵の最高明度になるということです。


りぼんの丸みを生み出す
光のグラデーションに対応するように

紙の白さを生かして
色の濃淡を表現することで

光のあたっているりぼんの丸みを
表現できます。
 



色の濃淡でつくった
グラデーションは

りぼんの立体感に
そのまま対応します。


🔻関連記事

無彩色・有彩色とは?|色の三属性-色相・明度・彩度の違い







彩度:Chroma(クロマ)



よりリアルなりぼんを描くには、

一色の明度の違いだけでは
うまく表現できない場合があります。
 

もう少し
りぼんを観察してみます。
 



りぼんの結び目近くの色をみると、

結び目の近くではりぼんに影ができ、
色が暗くなっています。
 

紫がかった暗い赤になり、

完全に影となっている部分は
赤いはずのりぼんも
ほとんど真っ黒にみえます。
 



このような色の変化は
絵の具を一色だけ使った
濃淡の表現では再現できません。
 

鮮やかな赤いりぼんと同じ
真っ赤な絵の具を
どんなに重ねても
黒くはならないからです。


🔻関連記事

絵の具の彩度を上げる?下げる?|鮮やかな色で水彩画を描く







一色からは生まれない色をつくる。


暗い結び目ちかくの
りぼんの色を表現するには、

紫がかった暗い赤や
ほとんど黒に近い赤色が必要です。
 

どうすればよいでしょうか。
 



赤く塗った、りぼんの上から
青や紫の絵の具を薄く塗り重ねる(重色
という方法があります。
 

さらに青を重ねれば
もっと青みの強い赤紫の陰が作れます。
 

他には
パレットであらかじめ
赤に青を混ぜて(混色

紫がかった赤色を作ってから
陰を塗る方法もあります。

🔻関連記事

減法混色と三原色|色が見える仕組みと濁らない混色のコツ





また、
そんな暗いカゲにぴったりの色の絵の具が
画材屋さんで見つかるかもしれません。
 

自分でパレットで混色して作るよりも

その色の絵の具を買った方が
発色が綺麗な場合もあります。

 

このように
色を混ぜ合わせて
新しい色を生み出すことで

赤みがかった紫や
青みがかった紫といったように

色の数は
無限に広がります。
 

🔻関連記事

ホルベイン透明水彩|色見本30色《色番号・廃盤色の作り方》






色相と彩度



色の混ざりあいで生まれる
新しい色の変化は、

色相と彩度
という表現で分類できます。
 

さきほどの 1 色の濃淡で表した
明るさの度合い(明度)とは違って、

同じ赤みのある色でも
異なる赤色(色相)
があるというわけです。
 




赤と青の混ぜる比率を変えることで
色相の異なる鮮やかな色が
沢山生まれます。

 

今度はそこに

色相の大きく異なる
黄色を加えると

さらに複雑な色が生まれます。
 




混ぜ合わせる色相の種類が
多くなると

色がくすんでいきます。
 

それぞれの固有の色相によって
最高に鮮やか(高彩度)な色
というのがあります。

 

一方で、
どの色相も色々な色と混ざり合うことで
彩度は落ちていき、

無彩色(彩度0)になります。
 

二色を混ぜただけならば
やや彩度が高い状態ですが、

沢山の色相を混ぜたくすんだ色は
低彩度といいます。

🔻関連記事

絵の具の彩度を上げる?下げる?|鮮やかな色で水彩画を描く







色の色彩原理を使って、立体感のある絵を描く

それぞれの色が持っている

明度・色相・彩度という
色の分類法が分かると、
 

色を整理しながら
使うことができるようになります。
 

蝶々結びをした
鮮やかな真っ赤なりぼんを描くには、

鮮やかな真っ赤(高彩度)な絵の具を使って
水の量をコントロールしながら

赤色の濃淡(明度の変化)によって
立体的なグラデーションを
生み出すことができます。




さらに、
陰の部分については

赤い絵の具に青みを加えるなどして
徐々に赤色の鮮やかさ(彩度)
落とすことで、
 

鮮やかなりぼんの色から
暗い部分の色へのグラデーションを
つくることができ、

さらに光を感じる
立体感のある描写が可能になります。

🔻関連記事

ザクロの水彩画|果物の描き方と補色 〜色彩科学のお話〜







実物から学ぶ。



このような
りぼん自体の描写とあわせて、

りぼんの背景にも
明暗や色相、彩度の変化を使うことで

さらに
絵全体の遠近感をだすことができます。
 



実際には、
環境によって色の見え方は変わります。
 

今回の『りぼん』のように
描こうと思うモチーフがあるときに

その固有の環境の中で
どのような色に見えるのか
 

明度・色相・彩度という
色の分類法の視点で

目の前の対象を観察するのは
絵を描くうえで大変勉強になります。


🔻関連記事

無彩色・有彩色とは?|色の三属性-色相・明度・彩度の違い







■ 透明水彩とは|色の塗り方の一番の習得方法



ここまで
文章でいろいろと書いてきましたが、

やはり、
実際に色を塗っているところを見てみたい

と思われるのではないでしょうか。
 



絵の具を溶く水の量
絵の具の濃さ

筆に含ませる絵の具の量
塗り重ねるタイミング
 

言葉で説明されても
なかなか分からないものばかりです。

 



基本的には
基礎から教えてくれる水彩画教室で学ぶことが
早道だと思いますが、

最近は綺麗な写真が沢山載った解説書が多いので、
基礎的な技術は本を読んで習得することも
できそうです。
 

おすすめは、

最初から、
自分の好きなスタイル、
自分がこのような絵を描きたいと
思う絵を描く先生につくこと
です。
 



透明水彩は大変デリケートな技法なので、
自分が持っている画材(特に紙)で
理想の絵が描けるとは限らないからです。


こんな絵が描きたいと思う絵を
実際に描いている先生から直接
絵を学べると、

目指す画風に必要な画材(紙・絵の具など)や
描き方を実際に試しながら体得していけます。




目の前で見て学ぶことで、

言葉での説明もよりスムーズ
伝わってきます。

まさに、
百聞は一見に如かず
です。





何か新しいことを学ぶというのは
勇気がいることですし、
上手くいかないこともあります。
 

そんなとき、

目の前で
心から素晴らしいという絵を
教えてもらえていると

それだけでも感動的で
ただただ楽しくて無心で絵を描く
そんな自分にきっと会えるばずです。


🔻関連記事

大人の水彩画教室選び|初心者さんが絵を習うための第一歩

🔻関連記事

絵を描く時間を取り戻す|自宅で透明水彩《通信講座のすゝめ》








■ 透明水彩とは|まとめ




  • 透明水彩は透明度の高い絵の具の特徴を活かして、水をたっぷり使ってのびのびとした優しい色合いで絵が描ける技法です。
  • 絵の具、それから紙と筆、この 3 点は良いものを選ぶのがおすすめです。
  • お手本となる素晴らしい絵を描く先生から基礎を直接学ぶことが上達の早道です。


同じ透明水彩でも、描かれるモチーフやテーマによって絵の具の塗り方や選ぶ画材は変わってきますが、透明水彩の特徴を活かした水をたっぶり使った透明感あふれる美しい絵には、本当に言葉を超える感動があります。透明感あふれる美しい作品が描けますように!

▶︎ 「【パンジーの水彩画】花の描き方と簡単試し塗り《動画つき》」では、簡単な試し塗りの方法を動画でご覧いただけます。

NORi


🔻関連記事