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【技法】失敗も隠さない潔さ|悩ましい「桜」に自分を映し出す

    
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【技法】失敗も隠さない潔さ|悩ましい「桜」に自分を映し出す

こんにちは、NORi です。
今回のテーマは「桜」です。絵を始めたら誰もが一度は描きたいと願う憧れの花の一つが桜ではないでしょうか。けれども桜は、最も「悩ましい」花でもあります。

そこで今回は、桜を前にして筆が止まりながらも挑戦した、わたしの桜のスケッチと色塗りの工程をまとめてみました。「潔く」迷いながら、「潔く」最後の一筆を置くまでの記録を、綴ってみようと思います🌸

NORi

悩ましい桜の描き方|簡単スケッチ編

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絵を描くというのは
本来とても自由なものなので、

” 何を描くか ”
” どのように描くか ”

ということも含めて、

自分が描きたいと思う絵を
自由な気持ちで
描いてみたいですよね。



大人になってから自由な気持ちなんて
一度も感じた事がない
と思う方もいらっしゃるかもしれません。

絵を描くというのは
そんな自由を実現できる
貴重な機会と言えるかもしれません。


誰に言われたわけでもないのに
「絵を描きたい」と思うなんて、
なんだか本当に
凄い事ではないでしょうか。





さて
今回は「桜の描き方」というわけですが、

描きたいと思う気持ちはあっても
桜って本当に悩ましいお花ですよね。


花びらがはらりはらりと舞い散る
満開の桜並木の下を歩きながら心に浮かぶ
なんとも言えない心模様。

そんな言葉にならない思いを
なんとかして絵に込めたいと
そう思うからかもしれません





私自身、
どう描いたらいいのか
どこから描けばいいのか

桜を実際に描き始めるまで
とても時間がかかりました。


今回は
そんな悩ましい桜に
ようやく自然体で挑戦できた
記録として、

桜の下書きスケッチから
色塗りまでの全ての工程を
まとめてみました。


それでは
下書きスケッチのお話から
始めていきたいと思います!






悩ましい桜のスケッチのための道具のご紹介

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スケッチブックに絵を描きたいなと
思ったとき、
どんなスケッチブックを選べば
良いでしょうか。


スケッチブックを一冊選ぶのも
これまたなかなか悩ましいところです。


何をどんなふうに描きたいかによっても
描き心地の良いスケッチブックが
変わってくるからです。





例えば、
自分の書き癖というのがあります。
筆圧が高めの方は
少し厚めの紙が合うかもしれません。


それから
好きな線というのもあります。

柔らかめの鉛筆のざらざらっとした質感が
しっかり残るような線がお好みであれば、

紙の肌目の凹凸が美しいスケッチブックに
濃いめの鉛筆で描いてみると
しっくりくるかもしれません。



あるいは
弱い筆圧でさらりと描くスタイルならば

紙の表面が滑らかなスケッチブックを
選ぶと良いかもしれません。





このように、
自分の好みはどうだろう?
自分はどんな描き方になるんだろう?

とちょっと試しに何かを描いてみたりすると
イメージが掴みやすいかもしれません。


ここからは、
私が桜のスケッチに使った
スケッチブックと鉛筆を
ご紹介していきたいと思います。






❶ スケッチブック

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愛用のスケッチブック by NORi



上の写真が、
今回わたしが使ったスケッチブックです。
(たまたま表紙が桜の絵でした🌸)



日本の自然をこよなく愛し
亡くなるまで毎日スケッチを続けた言われる

日本画家・川合玉堂
(1873-1957)

の美術館オリジナルスケッチブックです。


 ▶︎参照:GYOKUDO ART MUSEUM|玉堂美術館



紙の厚みが薄すぎず厚すぎず、
それでいてしっかりした紙質です。

紙の表面の凹凸は控えめで
鉛筆の滑り具合がとてもよく
描き心地もとても良いです。


さすがスケッチの王様の美術館が
提供しているスケッチブックです!





市販のスケッチブックの中では

【裏面】の紙質が近いかなと思います
(厚みもとても近いです)。



下の写真の左下の赤いスケッチブックです。

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愛用のスケッチブックたち by NORi





数あるスケッチブックの中から
表面が比較的滑らかでしっかりした紙質の
今回の桜用のスケッチブックを選んだのには
もちろん私なりの理由があります。



モチーフを観察しながら
絵を描くスケッチでは

目線はモチーフを見たまま
手元を見ずに絵を描く瞬間が続きますが、


そんな時、
筆圧が弱くなっても細かい鉛筆の線が
しっかり残る紙だと安心かなと思いました。





紙の表面の凹凸が大きいと
鉛筆とその凸凹がぶつかって
鉛筆の線が飛ぶことがあります。


カゲをしっかり描き込んで
立体感を表現するデッサンでは
そのような紙の方が描きやすいので
よく使いますが、


今回は
形状を捉えるだけの簡単な観察スケッチ
というつもりなので、

紙の表面の凹凸でニュアンスが加わるよりも
純粋に自分の描いた線だけを
しっかり記録として残せるように
紙の表面は滑らかなものを選びました。





それから、
自然に力が入って筆圧が高くなっても
いちいち鉛筆との摩擦で
紙がめくれるようなことのないように

ある程度の硬さや厚みのある
柔らか過ぎない紙が良いと思いました。


あまり紙が薄いと
描いている途中で紙がよれたり
めくれたりする時があります。


以上のようなことを踏まえた結果、
今回は玉堂美術館のスケッチブックを
選びました。





今回は満開の桜並木の
風景を描くのではなく

手が届くほど近くの枝に
可愛らしく咲いている桜の花びら一枚一枚を
観察しながら描いてみたいと思います


手元を見ずに、
モチーフ(桜)だけを見つめる。

たとえ線が歪んでも、
それは桜の命を真っ直ぐに追った
誠実な記録です。





▶︎ スケッチの上から色を塗りたい場合

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愛用のアルシュ紙ブロックタイプ by NORi



今回わたしは
スケッチブックに描いたものを
あとで水彩紙に描き写してから
色を塗るという手順で絵を描きますが、


もしスケッチをしてそのままその上に
水彩絵の具で色を塗りたい場合は
最初から水彩紙に描くのがおすすめです。


上の写真は
私が愛用しているアルシュの水彩紙の
ブロックタイプです
(300g/cm2、細目)。


実際に手持ちのARCHESのプロックに
スケッチした上から色を塗った様子が
↓こちらです。

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アルシュ紙でのスケッチと色塗りの様子 by NORi



紙の厚みが 300g/cm2以上ある
水彩紙のブロックタイプを選んでおくと、

スケッチしてからそのまま色を塗っても
紙がよれたりしにくく
綺麗に仕上がるかなと思います。



道具選びというのは
「今の自分」に合う心地よさを探す
とても自由な工程です。

その迷い(悩み)すらも、
描く喜びや楽しみの一部です。







❷ 鉛筆

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愛用の鉛筆 by NORi


今回の桜を描いた鉛筆は、

です。



個人的には
HB・B・2Bあたりの柔らかさが
スケッチにはいいかなと思います。







悩ましい桜のスケッチ動画(🎥YouTube)


桜のスケッチの様子を動画にしました。
(動画再生時間:1分59秒)

※音楽が鳴りますので、音量の調整をしてご覧ください。


桜のスケッチ動画 by NORi



今回のように
小さなお花をスケッチするというのは

風景画を描きたい方にも
役立つことと思います。


いやいや風景画ならば
ひとつ一つの桜の花を書き留めなくても
いいんじゃない?


むしろ
一つ一つの桜の形なんか
細かく描かないことが
風景画のコツなのでは?

と思われるかもしれません。





ですが
風景画を描いている画家さんも

風景画を描く前に
桜の花の形や枝ぶりの様子を
しっかり観察するという工程を
どこかの機会で一度は踏んでいるようです。


そうでないと、
遠方の景色としてさらりと描くだけでは
それらしく見えない
という事が起こるからです。



たとえ白黒の水墨画であっても
見る人が見れば
これは桜の木を描いたと分かるわけで、

逆に
形の特徴を押さえずに
適当に桜色で遠方の桜の木を描いても

なんだかちょっとおかしい
と感じるような絵になってしまうことが
あるわけです。





というわけで、
一度は桜の花びら一枚一枚に注目して
観察スケッチをしてみることは、

ゆくゆくは風景画に挑戦したい
と思われている方にとっても
有効な下準備になるかと思います。





ここからは
動画の解説をしていきたいと思います。





▶︎ スケッチ解説|STEP1

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桜のスケッチ【STEP1】 by NORi




むむむ・・・薄くてすみません。

上の写真中央に
消えてしまいそうな線で
桜の花びらが2枚描いてあります。


さて
いざスケッチを始めようと思って見たものの、
一体どこから描き始めればいいのか悩ましい
という方もいらっしゃることと思います。


そんな時は
一番描きたいものを最初に描く
というのをおすすめしたいと思います。






「一番描きたいものだけを描く」
と言い換えても良いかもしれません。

これにはいくつか理由があります。

まずは、
サイズ感の問題です。


スケッチブックに絵を綺麗に収めるために
スケッチブックの大きさに合わせて
構図を考えて、

その構図を念頭に
花の大きさを調整しながら絵を描く・・・

「難しくないですか???」





なんだか脳みそがはち切れそうです。

考えているだけで一向に手が進まず
永遠に絵が描けなくなりそうでした・・・。


そんな悩み深き私が編み出した方法が
(大袈裟ですね)
自分が描けるサイズというのを先に知って
そのサイズ感で絵を描くという順番です。


上の画像では
最初に主役の花びらを描き始めていますが、

これは
スケッチブックに
これくらいのサイズで描けばいいかなと考えて
描いているわけではありません。





一番描きたい桜の花を一つ決めて、

その中の一枚の花びらだけを描くつもりで
スケッチブックの真ん中に
一枚の花ひらだけをまず描いたのです。


そしたら一枚描けたので、
嬉しくなってもう一枚
隣の花びらも描きました。


これで分かることは、

いま目の前にある桜の花を描こうと思ったら
わたしはこのくらいの大きさで
花びらを描くことができる

ということです。





これが
自然体で自分が描けるサイズ感を知る
ということです。

勢いに乗った私は、
もう3枚花びらを描いて
桜の花を一つ
完成させてみたいと思いました。







▶︎ スケッチ解説|STEP2

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桜のスケッチ【STEP2】 by NORi




本当に見にくいですね、すみません。

上の写真中央に
消えてしまいそうな線で
桜の花びらが5枚描いてあります。


とうとう桜の花が描けました。


悩みの深かった私にとっては
これだけでかなり満足でした。

もうこれで満足してもいいかも
と思いました😊





コーヒーを淹れて
この力作をしみじみと眺めているうちに

なんだか嬉しくなってきて
もうちょっと頑張って
中央のおしべも
描いてみようと思いました。






▶︎ スケッチ解説|STEP3

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桜のスケッチ【STEP3】 by NORi




おしべが入ったら俄然、
桜らしくなったのではないでしょうか。

描けないと思っていたからこその
ささやかな感動が次の一歩を後押しして
ここまで描くことができました。

もう満足してもいいかも
と思いました(2回目!)😊





こんなふうに
自分が一番描きたいものだけをまず一つ、

そしてまた一つと
絵が描けた感動を味わいながら
自分のペースで描き足していく方法なら、


とても描けないと思っていたものも
少しずつ形にしていくことができそうな
気がしてきました。





スケッチを通して
自分のことも色々と学べますね。

自分のペースや
自分の描ける量、
自分の描きたいものや
自分が描ける大きさなど。


その時に描きたいものだけ。
その時に描ける分だけ。


絵が描けるささやかな喜びを感じながら
無理せずに少しずつ描ける時間を作れたら、

いつか自分にちょうどいいモチーフや
自分にちょうどいい構図やサイズなども
わかってきて、

自分が自由に絵を描いていける
自分らしい絵のスタイルというものが
発見できるのではないかなと思いました。







▶︎ スケッチ解説|完成(今日はここまで)

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桜のスケッチ【完成】 by NORi



すっかり気分を良くした私は、

最初に描いた中央の桜の上下に
一つ、また一つと描き足すようにして
桜の花や葉っぱを増やしていきました。


そして疲れ果て力尽きたところで
今日の完成と致しました。






悩ましい桜のスケッチ後日談


わたしは念願の桜が描けたことが
本当に嬉しかったようで、

次の日も次の日も
描ける分だけ描く
という楽しみが続きました。


自分の描ける時に
絵を描き足していく喜びや

描ける分だけの
ちょっとしたスケッチが
増えていく楽しみも感じました。





桜を描きたいと恋焦がれて
気が熟すまで
何年もかかってしまいましたが、

少しでも桜が描けたことは
大きな喜びになって
自信にもつながりました。


こんな風に
小さな桜を少しずつ描き続ければ

いつか自分が本当に描きたい
満開の桜の景色も描けるかもしれない

そんな気持ちまで湧いてきました。





絵を描くって
物凄いエネルギーだなと
改めて思いました。


絵を描きたいとなぜか思う私達は
絵を描くことで
この世で生きる全ての命の美しさに感動し、

何かのために自分の命を燃やす覚悟を
確認するのかもしれませんね。






悩ましい桜の描き方|水彩色塗り編

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桜の下絵ができたので
次は色塗りに入りたいと思います。

ここでまた悩ましいのが
桜の色選びです。


桜にも色々な種類があって
色づき具合も様々です。

私がスケッチしたのは
ソメイヨシノで、

満開になると
花はほとんど真っ白に見えます。





白い紙に白い花。
桜はどこまでも悩ましい花ですね。


もちろん白いスケッチブックに
鉛筆で桜を描いたように
線で桜を表現することもできます。

輪郭線は東洋美術の伝統的な表現ですし、
美しい線で描く桜も憧れますよね。


もし線を強調しない描き方をするならば、
白い紙の上で白いものを描くには
陰影や濃淡の変化によって
明暗のコントラストで差異を表現する
以外ありません



繊細なカゲをつけることで
上品な桜の存在感を
醸し出すことが出来るかもしれません。





他にも、
背景を暗くすることで
白い桜の花を目立たせる方法もあります

実際の風景では
桜の背景には必ず何かがあり
真っ白というわけではありません。


白い桜の背景に何かを描き込んだり
濃い色で背景を塗りつぶしていくことで
白い花を際立たせることが出来ます。



このように考えると、
白い桜を描くための表現方法も
色彩を含めて考えれば
無限に可能性が広がっていきますね。

丈夫なアルシュ紙があれば、
失敗を恐れず何度でも挑戦できます。






白を塗るのではなく
紙の白さを『光』として残す勇気を持って、

ここからは
わたしが描いた悩ましい桜の
実際の制作風景を
ご紹介していこうと思います。






悩ましい桜の色塗りのための道具のご紹介

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上でも書きましたが、

今回は桜のスケッチの上に
そのまま色を塗るのではなく

スケッチした桜の下絵を
水彩紙に書き写してから
色を塗っていきます


水彩紙にも色々な種類があるので
お好みの水彩紙が決まるまでは
ひと苦労かと思いますが、

水をたっぷり使う透明水彩では
紙の厚みが 300g/cm2 以上ある
比較的丈夫なものを用意されると
安心かなと思います。



それでは改めて
私が使っている水彩紙から
ご紹介していきたいと思います。






❶ 水彩画用紙

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愛用のARCHES水彩紙 by NORi



今回の桜の水彩画には
ARCHES(アルシュ)の水彩紙を使いました。

ARCHESの水彩紙は、
ピカソやゴッホを始め
今も世界中のアーティストに愛される
世界最高級水彩紙です。


コットン100%で吸水性に優れ
様々な技法に耐える大変丈夫な紙です。

丈夫だということは
透明水彩においては特に有利な条件です。




透明水彩は一般的に
修正することが難しい技法ですが、

丈夫な紙であれば
例えば「リフティング」といった修正技法も
試みることが可能になります。


逆に言うと
丈夫な紙を選ばなければ、

マスキングを多用したり
幾重にも美しい色を重ねたりといった
透明水彩らしい絵を
失敗を恐れずに追求することはできません。



このような点からも
初心者の方にこそARCHES紙を
私はおすすめしています。





今回は
ARCHES水彩紙 ブロックタイプ
(300g/cm2 細目 20cm×20cm)

を使っています。

ただし
ブロックの一番上の紙を一枚だけ使って
木製パネルに水張りしてから
絵を描きます。


透明水彩は本当に水をたっぷり使うので
ブロックのまま色塗りをすると
下の二枚目の紙にまで
色が移ってしまうことがあるからです。

本格的な作品に取り組む時は
念のために一枚一枚ブロックから外して
水張りしてから絵を描くようにしています





今回は0号の木製パネルに
ARCHES紙を巻き付けるように水張りする
「パネル張り」をして制作に入りました。





▶︎ 下絵の準備

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スケッチを写し取る様子 by NORi



まずは
スケッチブックに描いた桜の絵を
トレーシングペーパーに写し取ります。

トレーシングペーパーで写し取るメリットは
作品用としての下絵の構図を
自由に作り直せることです


上の写真をよく見ると
スケッチブックに描いた桜の絵と
トレーシングペーパーに写し取った絵が
少しだけズレていることが分かるかと思います。





例えば
今回は0号サイズの絵にしたいのですが、
スケッチブックに描いた桜のスケッチは
0号に入り切らない大きさでした。

そこで
トレーシングペーパーに写し取る際に、
一番上の桜の花の茎と
一番下のつぼみび茎の長さを
それぞれ少しずつ短くして
0号に収まるように調整しています。


そうすることで
もともとのスケッチブックには
手を加えることなく、
トレーシングペーパーの上で
あれこれ構図を工夫しながら
0号の下絵を作ることができるわけです。





「このようにして作った下絵を
パネル張りした0号のARCHES紙に
さらに転写したものが下の写真です。

スケッチをそのまま写すのが正解ではなく、
自分が描きたい『0号の世界』のために
長さを変える勇気と調整が
絵に心地よい緊張感を与えます。


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0号サイズの下絵完成の様子 by NORi


トレーシングペーパーの下絵の裏側に鉛筆で塗り潰すように黒鉛を塗り、水彩紙の上で下絵をなぞることによって下絵を水彩紙に転写することができます(転写した線が濃い時は、練り消しゴムで抑えるようにして線を薄くすることができます)。





❷ 筆

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今回の色塗りで使った筆は、

  • ラファエル 水彩筆 8404(ラウンド・中細)コリンスキー 5号
  • 名村 イタチ面相筆(極小)

の2本です。



共に水の含みの良い天然毛で
しっとり滑らかに色を塗ることができます。

また、
弾力もあり丈夫で長持ちします。








❸ 絵の具

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今回の色塗りで使った絵の具は
ホルベイン透明水彩絵の具18色セット
に含まれる絵の具から、

以下のような感じで
各パーツごとに色を選びました。


  • 花びら:2色(赤系・青系)
  • 葉:3色(緑系・赤系・青系)
  • 花粉:1色(黄系)
  • 背景:4色(赤系・黄系・茶系・青系)




上の色選びは
別々に10色選ぶわけではなく、
青系は青系で同じ色を使っています。

例えば
自分の好きな青色を一色選んで
花びら・葉・背景のカゲの部分に
その色を加えています。

このように少しずつ同じ色を
画面に散りばめることによって
絵全体として統一感が出ます。


多色の絵の具を並べるのではなく、
信頼する一色を画面全体に旅をさせます。

この一貫性が、
複雑なモチーフにも
『静寂』と『統一感』をもたらします。




透明水彩は修正が難しいので、
事前にしっかり試し塗りをして
自分のイメージに近い色を選んでおくと
安心して色を塗っていくことができます

失敗せずに絵を描くための準備を
しっかりしておくことが
透明水彩ではとても大切です。







悩ましい桜の色塗り動画(🎥YouTube)


信頼できるアルシュ紙をパネルに張り、
白い桜と向き合う準備が整いました。

線の表現、陰影、背景とのコントラスト。


無限の可能性の中から、
私が選んだ『色』とは——。




ここからは、
実際の制作風景をご紹介します。

色塗りの様子を動画にしました。
(動画再生時間:1分47秒)

※音楽が鳴りますので、音量の調整をしてご覧ください。


桜の色塗り動画 by NORi





悩ましかった桜にようやく色がつきました。

今回のように
背景を色だけで表現する場合は
色選びの工程がより一層重みを増します

背景の色や濃さ、塗り方で
作品の印象を大きく左右することになるからです。


桜の花や葉っぱの色を選ぶ時は
固有の色や形がありますが
(その通りに塗るかどうかは置いておいて)、

つかみどころのない背景に色を塗る場合には
主役の桜をどのように見せたいかによって
色選びも塗り方も変わることと思います






自分が桜に持っている
どのような印象を大切にして絵を描きたいのか、

そしてそのイメージを
どのような色でなら表現できるのか。


そんなことを探求していった先に
自分らしい色が見つかるのかもしれません。
・・・本当に悩ましいですね。




ですが
ひとつひとつの作品に向き合うたびに
そのような努力を重ねていくことで、

少しずつでも自分の描きたい絵に
近づいていけるのではないかと思います。


それではここからは
動画の解説をしていきたいと思います。






▶︎ 色塗り解説|STEP1

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桜の色塗り【STEP1】 by NORi




色塗りを始める前に、
まずは細かいおしべをマスキングしました。


おしべの先端の黄色い花粉は
最後に塗ろうと思います







▶︎ 色塗り解説|STEP2

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桜の色塗り【STEP2】 by NORi




一番明るくしたい主役の桜は後回しにして、
まずは周辺の桜の花びらに色を塗りました。

明るい部分には出来るだけ色を塗らずに
紙の白さを活かすようにしたいと思います。


また、
透明水彩は修正が難しいので
目立たない部分から塗るようにしています



特に今回はモチーフが白いので
濃く塗り過ぎてしまうと
修正が難しそうです。






▶︎ 色塗り解説|STEP3

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桜の色塗り【STEP3】 by NORi




葉っぱは明るい色から塗り始めています。

今回は明るい黄色から塗り始めて、
ところどころ緑色を加えました。


黄色の絵の具が乾かないうちに
緑色をちょんちょんと軽く落とすと
2色が綺麗に混ざり合って
水彩らしい表現が作れます


また、
緑色の落とし方(落とす場所や量)によって
葉っぱの立体感や動きが作れます。






▶︎ 色塗り解説|STEP4

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桜の色塗り【STEP4】 by NORi




全体に明るい色合いなので、
茎を暗めの色で濃く塗ることで
画面にメリハリをつけました。


また、
色は響き合うものなので、
花びらのピンク色の発色を
さらに引き立てるために
茎の色は少し赤味を強めにしました。


色が濁らないようにするために
少ない色数でひととおり塗り終えました。






▶︎ 色塗り解説|STEP5

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桜の色塗り【STEP5】 by NORi




悩ましい背景ですが、
今回は暖色系の黄色にしました。

まずは慎重に黄色一色で
全体に薄めに色を塗ることにしました。


今回の構図では
背景の面積が比較的広めなので、

背景の色味や塗り方の雰囲気で
絵の印象も大きく変わりそうです。





今回の塗り方としては
薄い黄色の絵の具を塗りながら
ところどころ水でぼかす方法で
ふんわりと色づけしてみました。

少し背景が濃くなるだけで
薄い色の花びらがはっきりとしてきました


一旦乾かして眺めてみますと、
黄色の濃淡がところどころ出来た様子は
心地よく感じられたので、

この調子でこのまま黄系で背景を
少しずつ濃くしていきたいと思います。







▶︎ 色塗り解説|STEP6

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桜の色塗り【STEP6】 by NORi




黄色に茶系なども加えながら
色の幅を少しずつ増やして
背景の雰囲気を強めてみました。

透明水彩は色の重なりや濃淡の変化が
本当に綺麗ですね。


さらりとした水彩らしい表現としては
この辺で完成にしても良さそうです


悩ましい時は薄い色から塗り始めて
徐々に色を強めていくのが
失敗しにくい方法です





どこで色塗りを止めるかも
悩ましいところですが、

今回は少し力強い雰囲気も出したいので
もう少し濃くしていきたいと思います。






▶︎ 色塗り解説|完成

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桜の色塗り【完成】 by NORi




念願の悩ましい桜の絵が
ようやく完成しました。

全体に背景を少しずつ強めて
ここで完成と致しました。


絵は必ず額装して作品に仕上げる
という意識を持つことは、
絵の完成度を高めるのに
良い訓練になる気がしています。


額装してお部屋に飾って
しばらく眺めてみたいと思います。
そして感じたことを
二作目につなげていきたいです




さらりと終えるか、
力強く塗り込むか。

正解のない背景に色を置くとき、
私たちは自分自身に問いかけます。


『私はどう描きたいのか?』という潔い決断が、
最後には絵に命を吹き込むのかもしれません。







悩ましい桜の描き方|まとめ

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桜の水彩画 by NORi




  • 悩ましい桜の花びら一枚を描けた喜びが、小さな達成感となって「自信」という名の土台になります。
  • 悩ましい桜は、描ける量、描けるサイズ、自然体で向き合う「潔さ」で、自分の物差しを手に入れることができます。
  • 悩ましい桜の背景の色塗りは、悩みながらも自分のイメージを追求することで「自分らしい絵」の表現につながります。


何から何まで悩ましい桜ですが、この「悩ましさ」こそがまた桜の、そして表現することの魅力ではないかと、そんなふうに思えてきました。

薄い色から、少しずつ。自分の心に「これでいいかな?」と問いかけながら、色を重ね、どこで筆を止めるか、その答えは教本の中にはありません。「これ以上は、私の今の心が望んでいない」そう感じた瞬間に、潔く筆を置くこと。それは、完成という結果以上に、描き手にとって大切な「自分への誠実さ」の証明かもしれません。

▶︎ 「【対話】静寂の中で次を待つ|題材という名の「美」との再会」では、自分の「美」の感性に立ち返る、そんな一歩を踏み出すためのお話を書いてみました。

NORi