NORiの水彩画|動物のリクエスト絵画【白い愛犬の肖像画制作】


こんにちは、NORi です。
 

わたくしが専門としております
透明水彩では、

白いモチーフを描く際に
白い絵の具を使わずに描く
という表現方法をよく用います。
 

これは
透明感あふれる色彩を実現するために
紙の白さや質感を積極的に活かす

透明水彩ならではの独特の技法です。

今回はそんな透明水彩の技法が際立つ
『白いワンちゃん』の肖像画

制作過程をご紹介してみようと思います。
 
( ※ このページの記載内容は
ご本人様よりご了承を頂いております
。)
 

【透明水彩の塗り方動画】絵の具の塗り方・技法・スケッチ

 

【水彩画・動物】犬のリクエスト絵画

『ワンちゃんの肖像画』by NORi
(15cm × 15cm)

わたしは定期的に
母と二人で絵画展を開催しています。
 

個展には色々な方がご来場くださって、

会場で新しい輪が広がったりするのも
とても楽しい光景です。
 

そんな中で
新しい驚きを感じるのが

母と娘
というコンビネーションです。

 

母とわたしが一緒に
絵画展をしていることと重なって、

そのことが
密かに嬉しく感じるのです。
 

■ せっかくなので。。。

個展の様子 by NORi

「せっかくなので、母を連れてきました。」

そう言ってご来場くださる
娘さんがいたり、
 

「娘が絵が好きなので、一緒に来ました。」

とおっしゃっるお母様も。
 

離れて暮らしているご家族様が
仲良く待ち合わせをしてご来場くださる様子
もまた

拝見していて本当に嬉しい気持ちになります。
 

そんなある日、
『 NORi さんに、
我が家のワンちゃんの絵をお願いしたい 』

そうおっしゃってくださったのは
あるお母様でした。
 

■ 母と娘と、ワンちゃんと。

早速、
ワンちゃんに会いにご自宅に伺うと、

娘さんが一緒に
笑顔でお出迎えくださいました。
 

綺麗に整えられた庭の木々が美しく、
沢山のお花が咲いていました。
 

有形無形の沢山の宝物が
そこには感じられました。

 

ご希望の絵のサイズを伺って、
絵を飾るご予定の場所を拝見しました。
 

見慣れない私の姿に
ワンちゃんは少し慌てている様子。
 

娘さんにワンちゃんのベストショットを
送っていただくことにしました。

 

■ 家族にしか見せない顔。

お母様と娘さんの

お気に入りのワンちゃんの写真が
何枚か送られてきました。
 

とってもキュートです。
 

やはり、
私が伺ったときのワンちゃんは
少し緊張していたようです。
 

「愛らしさ」「愛おしさ」
といった感情は、

言葉で表現し尽せないものですね。
 

そんな心から溢れる想いや心模様
といったものを

何としても表現したいという情熱が
芸術のはじまりでもあるのだろうと感じます。

 

お母様と娘さんが
それぞれに愛しているワンちゃんの印象。

それを一枚の絵にしようと思いました。
 

【水彩画・動物】白いワンちゃんをどうやって描こう?

family

『 family ~家族を想うとき~』by NORi
(16cm × 27cm)

上の写真は、

私が好んで描いている
白い器シリーズの作品です。
 

透明水彩で白いものを描くとき、

白い絵の具を使わないで描くことが
ポイントになります。

 

透明水彩絵の具の特徴は、

その名前通り
透明度の高さにあります。
 

それは紙の白さが
透けるほどの透明感です。

 

■ 透明水彩が難しいと言われる理由。

また、

一度塗った色は
上から他の色を塗っても消すことは
できません。

 

これは上からどんどん重ねて
新しい絵を描き足すことができる

絵の具の不透明性を活かした
油絵などの技法とは
大きく異なる点です。
 

つまり、
上から色を重ねる際には
最終的にどのような色になるのか

下の色とのコンビネーションを
ひと塗りひと塗り
頭の中で計算しながら

塗らなくてはならないということです。
 

ちょうど
異なる色のセロハン紙を重ねていくような感じです。

そして、
やり直しはほとんどできません。
 

これが、
透明水彩が難しいと言われる理由です。
 

■ 繊細な色の重なり。

background
絵の具にも白色がありますが、

実は白い絵の具というのは
透明度が低い色なのです。
 

そのため、

白い絵の具を使うよりも
紙の白さを活かすほうが

圧倒的に透明感のあふれる
明るい絵になります。

 

白いものを白い絵の具で描かないとするなら、
どのようにしたらよいのでしょうか。

 

その答えは
陰影を描くことにあります。
 

物の立体感を考える場合、

光の当たっている明るい部分と
カゲになっている暗い部分の
コントラストによって
 

物の奥行きなどの
立体的な広がりを感じることを

意識する必要があります。
 

それを透明水彩で表現するには、

一番明るいところを
一番明るい紙の白さで表現する

ということを考えます。
 

そのために
一番明るいところをあえて塗り残し、

光が徐々に届かなくなる陰影の部分を
美しい色のグラデーションで表現する

といった方法をとります。
 

また、
カゲといっても
単調な黒やグレーではなく、

実際には様々な色が混ざり合っています。
 

このように、

透明水彩では固有の色だけでない
陰影の表現にも

にじみやぼかしなどの技法による
複雑な色の混ざり合いや

絵の具の透明度を活かした
繊細な色の塗り重ねによって、
 

水彩画ならではの
ふんわりとした自然な立体感が生まれます。
 
 

【水彩画・動物】白いワンちゃんの下書き

doggy

デッサンの様子 by NORi

上の写真は、
下書き用スケッチを描いているところです。
 

鉛筆で描くデッサンは

ちょうど透明水彩の塗り方と
一致します。

 

鉛筆で描かない部分
(紙の色だけが残っている部分)が

実際の透明水彩で
塗り残す部分となります。
 

ただし、

透明水彩には
消しゴムは使えません。

 

塗り残すところは
最初から把握しておく必要があります。
 

そのため、
事前に鉛筆で描く下絵のデッサンは

透明水彩を描く前のイメージづくりにも
とても役に立ちます。

 

■ 象徴としての肖像画。

そんな下絵にも

描き手の想いが
腕を通して反映されます。

 

描き手はわたくしですが、

今回の『白いワンちゃん』は
リクエストしてくださった方の想いを

私が代筆させていただけたら
という想いで描いています。
 

ワンちゃんの存在を通して
お母様や娘さんが日々感じている想い。
 

ご家族みなさまの幸せに
花を添えられるよう

送られてきたお気に入りのショットから
エッセンスを少しずつ抽出しながら

一枚の絵にしていきます。
 

【水彩画・動物】白いワンちゃんの色選び

iroerabi

色選び作業の様子 by NORi

下絵ができたら
次は色選びです。

 

上の写真は私が普段している
色選びの現場写真です。

 

下書きのスケッチは鉛筆の
黒のグラデーションですが、
 

透明水彩絵の具で絵を描くときには
絵の具の透明感を活かし

なるべく黒い絵の具を使わずに
陰影を表現するようにしています。

 

黒一色で塗ってしまうのが
もったいない

という感じです。
 

よく見てみると実際の陰には
様々な色が含まれていますから、

繊細な色の塗り重ねや
色の組み合わせによって

奥深い色の表現を目指しています。
 

■ 絵の具を100色買いました。

enogu100

NORi のホームページTOP画面

私のホームページの
タイトルでもありますが、

私は絵の具を 100 色も買いました。
 

透明水彩絵の具は
もともと透明度の高い絵の具なのですが、

実際には
使用する水彩紙によって発色が変わります。
 

絵の具同士の相性もあり、

どの絵の具と、どの絵の具の
組み合わせならば

理想の透明感を実現できるのか
調べてみなければ分かりません。

【ホルベイン透明水彩】色見本30色・色選び ~ARCHES紙採用~

 

それにしても
どの色も本当に美しく、

色選びの時間は本当に感動します。
 

【水彩画・動物】白いワンちゃんの肖像画、納品。

doggy-3s

下書き(左)、色選びの一例(中央)、完成作品(右) by NORi

ご依頼をいただいた
ワンちゃんの絵が完成しました。

 

納品の日は、
喫茶店で待ち合わせをしました。
 

いつものように
包み込むように優しい笑顔のお母様と、

とってもオシャレなお召し物で
風のように爽やかに登場した娘さん。
 

心がパッと明るくなりました。
 

■ ただただ感謝のリクエスト絵画。

今回のご依頼は、
構図・色の雰囲気など全てお任せ
とのことでした。
 

完成作品を観ていただきながら
制作中のことをお話ししました。
 

少し涙ぐまれながら微笑まれる
お二人の会話を聞かせて頂き、

このようなかかわりを頂けたことの幸せを
深く感じました。

 

ご帰宅後、

辛口の旦那様も
感激してくださったとの
ご報告をいただいて、

ひと安心致しました。
 

ご家族皆様の想いに触れさせて頂く
貴重な機会をいただき、

本当に光栄です。
 

この場をお借りしまして、
改めて深く御礼申し上げます。

この度はお声がけいただき
本当にありがとうございました。
 

これからも精進を重ねて参りたいと思います。
 

【水彩画・動物】白いワンちゃんを描く。-《まとめ》

doggy
  • 透明水彩絵の具は透明度が高く、紙の質感や白さを活かして塗り重ねることで明るく透明感あふれる繊細な色調の美しさが表現できます。
  • 透明水彩では白いモチーフを白い絵の具を用いずに表現することで、やわらかな自然な光を表現することができます。
  • 繊細な色の重ね塗りや、水の効果による『にじみ』や『ぼかし』の技術によって生まれる軽やかな色彩と光と陰影の複雑な表現が、透明水彩画の魅力だと思います。

 

NORi
今回の『白いワンちゃん』の肖像画は

温かみのある暖色系でまとめました。
 

ワンちゃんのふんわりとした
優しい表情が

今でも心に残っています。

【透明水彩の塗り方動画】絵の具の塗り方・技法・スケッチ

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