【水彩画のための影の塗り方】陰影の付け方とグリザイユ技法


NORi
こんにちは、NORi です。

今回のテーマは『影の塗り方』です。

NORi
自然な立体感は
自然な陰影によって生まれるため
陰影の表現は大切です。

ですが
透明水彩は
やり直しが難しい技法なので
陰影の暗い部分を塗るのは
なかなか勇気がいります。

NORi
そこで今回は
失敗しにくい影の塗り方
についてまとめてみようと思います。

絵の印象がグッと引き立つ
ひと味違う陰影の表現を極めて
素敵な作品が仕上がりますように。

 

⦅透明水彩の使い方⦆陰と影の違い


ひとことで【カゲ】と言っても
陰と影の2種類があります。

実はこの2種のカゲは
明確な違いがあります。
 

英語でも
『陰』と『影』では
それぞれ異なる単語が与えられています。

  • 陰(shade)
  • 影(shadow)

この2つのカゲの違いを

ぜひ透明水彩でも
うまく取り入れていきたいところです。
 

まず最初に
陰(shade)とは、

光がある方向から物体に当たった際に
その物体の【形状に沿って】できる
暗い部分です。

 

物体の立体的な凹凸に沿って
陰が出来ます。
 

一方で
影(shadow)とは、

その物体によって
光の進行が妨げられた結果、

物体から離れたところに出来る
暗い部分です。

 

「影が落ちる」
というのはこのためです。

陰(shade)は、
光がある方向から物体に当たった際に

その物体上の
光と反対側にできる暗い部分です。
 

その物体上にできる
陰の明暗のグラデーションによって

立体感が生まれています。
 

一方で
影(shadow)というのは
物体から離れて落ちるものです。
 

光がある方向から物体を照らす時、

当たった光の一部は
その物体に吸収され

あるいは
当たった光の一部が
その物体によって反射されます。
 

物体に当たらなかった光は
そのまま直進して
奥の壁や床などにあたりますが、

物体で遮られた光は直進できず
ちょうど物体の形をくり抜くようにして
影が出来るというわけです。
 

写実的な絵の表現には
このような『陰』と『影』の違いが
物体の立体感をもたらします。

このような立体感を表現するためには
どのように陰影を描けば良いでしょうか。
 

この2つの【陰】と【影】を形成する
光の道筋を理解することで

絵画における自然な陰影のつけ方が
見えてきます。
 

⦅透明水彩の使い方⦆陰影は黒? 〜グリザイユ技法の応用〜


陰影は光が遮られて
暗くなる部分のことですが、

透明水彩で描く時には
「暗いところに陰影をつける」
というよりも、

「明るいところを
残していくように陰影をつける」
という風に考えると良いかもしれません。
 

なぜならば
陰影に注目して塗っていくと

ついつい画面が暗くなりすぎてしまう
ということがあるからです。
 

あくまでも
明るい部分を際立たせるために
陰影をつけると捉えると

視線が明るい部分に向けられるため
画面全体の明度を
コントロールしやすくなるかなと思います。
 

陰影のつけ方には
大きく分けて2つあります。

陰影から最初に塗ってしまう方法と
陰影は最後に(あるいは徐々に)つけていく
という方法です。
 

透明水彩は
明るい色彩の調和を大切にするので

多くの場合は二つ目の方法
つまり
最初は明るい色彩で塗っていきながら
徐々に陰影をつけていく

という順番で塗ることが多いと思います。

【透明水彩の塗り方動画】絵の具の塗り方・技法・スケッチ

ですが
明暗のコントラストが
はっきりしたモチーフを描く場合や

物体の質感や立体感を
しっかり表現したい場合には

陰影を最初に描く方法もお勧めです。
 

陰影を最初に描く場合には
色は後から塗るため

最初に描く陰影は単色
(モノトーン)で充分です。
 

ちょうど
モノクロ写真のような仕上がりを
まずは目指していきます。

 

絵画においても
1色の濃淡だけで描かれたモノクロ絵画を
【グリザイユ】と呼びます。
 

グリザイユ(Grisaille)はフランス語で
灰色(gris)という意味が
含まれているそうですが、

一般的には灰色や茶色で描かれることが
多かったようです。
 

油絵の伝統的な下絵の描き方で
薄い灰色~黒の無彩単色で描き進め
後から色を着ける技法を
グリザイユ技法と呼びます。

茶系や黄褐色、鈍緑色など
有彩単色を使う場合には

カマイユ技法、シラージュ技法、
ベルダイユ技法と呼ばれるようです。
 

モチーフにあった色で
応用していたのですね。
 

⦅透明水彩の使い方⦆明暗を捉える


光と陰影を
明るさの強弱として
考えてみます。
 

光の当たった眩しい部分は
白っぽく見え、

光のない所は
黒っぽく見えますが、

これは
色彩学での【明度】という指標が
参考になります。

【色彩科学】有彩色とは|色の種類と三属性-色相・明度・彩度

明度は白・灰色・黒の
グラデーションで表現できます。
 

一番明るい白は最高明度の色
光が当たっている明るい部分に
相当します。

一番暗い黒は最も明度の低い色
光が当たっていない暗い部分に
相当します。
 

このはっきりした明暗に加えて
中間の明度である灰色の濃淡が

陰影のグラデーションと一致していて
立体感を表現することができます。
 

透明水彩では
白は紙の白さを活かすことができるので

明るい部分の白は
実際には白い紙を塗り残す
という方法をとることができます。

 

よって
絵画において
立体感のある陰影をつけるには

単色のグラデーションをつけるだけで
モノクロ写真のような立体感を
表現することは充分可能ということです。

 

また
セピア調の色だけで
モノクロ写真を再現するように
グラデーションを描けば

白・黒・灰色で作るモノクロに比べて
陰影や光の印象を
少し和らげた表現になります。
 

透明水彩は
絵の具の透明度の高さが大きな特徴です。

《透明水彩とは?》絵の具の特徴・技法の種類・道具選びまで

【透明水彩絵の具の使い方】色の塗り方・塗る順番・パレット

この透明度を活かし
グリザイユ技法と組み合わせて

色彩豊かな立体的な絵を
描くことができるわけです。
 

まず最初に
グリザイユ技法によって
ある1色だけで立体的な絵画を制作します。

モノクロ写真を描く感じです。
 

ここまでで
立体感のある画面が完成しているので、

この状態で一旦完全に乾かしてから
その上に
透明水彩絵の具で淡い色彩を
さらりと塗る
だけでも

あらかじめ塗っておいた
グリザイユの効果が透けて見えて
 

手数を最小限に抑えて
透明感のある明るい色調を活かしたまま

立体感もしっかり表現できる絵に
仕上げることができます。
 

例えば
自然の景色を描く風景画などでは
植物の緑色が画面を占めることになるので、

先に塗るグリザイユでは
緑色と親和性の高い
青色や青緑色などの色を用いると
まとまりやすくなります。
 

また
人物画のように
あまり暗い色の陰を付けたくない場合は

肌色に近い色で
グリザイユ技法を使うのがお勧めです。

透明水彩絵の具|きれいな肌色の作り方 ~おすすめ混色3選~

このように
色を工夫することで

色々なモチーフで
グリザイユ技法を応用することができます。
 

このように
色を重ねていく過程では

色が濁らないようにすることが
ポイントになります。
 

そのためには
色を重ねる前に
一旦、
絵を完全に乾かすことが大切です。

私は
水を多く使う塗り方をするので
半日~一日放置したりしています。
 

また、
重ね塗りに耐えられる紙を使うことも
大前提になってきます。

水彩紙にも色々ありますが
人によって塗り方や表現方法は違うので、

自分にあった紙を見つけることは
大変ですが、とても大切です。

 

私がおすすめする
重色に耐える水彩紙は
ARCHESという紙です。

水彩紙の種類|おすすめの紙の条件とは?~有名メーカー比較~

水彩画用紙|紙選びポイントと透明水彩のための水張りのコツ

《透明水彩》紙のサイズ一覧(500号まで)・紙の種類と選び方

 

⦅透明水彩の使い方⦆デッサンとグリザイユ技法

クルミのデッサン by NORi

透明水彩はやり直しが難しいので、

色彩豊かな透明水彩の画面の中で
比較的暗い陰影の色を塗っていくのは
緊張するかもしれません。
 

私は最初
失敗するのが怖くて

なかなか強い陰影の色を塗ることが
できませんでした。
 

それを克服するのに役立ったのが
デッサンの練習でした。

 

上の写真は
胡桃(クルミ)のデッサンです。
 

この二枚のデッサンを使って
グリザイユ技法を応用して

一枚の絵を制作したのが
下の作品です。

胡桃の固い表面の
ゴツゴツした感じを表現するために

鉛筆デッサンで描いたような
陰影を細い筆で先に描きました。
 

本来の単色画の技法としては
グレーや茶系といった色の
モノトーンで陰影を描く事になりますが

この作品では陰影の強弱を
色で塗り分けてみました。
 

色が重なることで
透明水彩らしい柔らかさも
出せたかなと思います。
 

透明水彩は修正が難しいですから

鉛筆デッサンを活用できる
グリザイユ技法は

安心感があるかもしれません。
 

1色で明暗を表現するグリザイユ技法は
まさに

鉛筆だけで陰影を表現するデッサンと
同じ感覚ですね。
 

色彩で陰影を描く場合にも
コントラストをどこまで強めればいいのか

デッサンの練習で感覚をつかんでおくことで

よりスムーズに陰影の色を置くことが
出来るようになりました。

パンジーの水彩画|花と葉っぱの塗り方動画《下絵と試し塗り》

 

モノクロ写真のように
一番濃い黒まで
しっかりデッサンで描く
という練習をする方が

明暗の雰囲気が
陰影の濃さで決まる
ことが
良く分かるかもしれません。
 

立体感の表現のコツを掴むことができる
デッサンの練習は

効果抜群です。
 

おすすめのスケッチブックや鉛筆は
↓こちらで少しご紹介しています。

《透明水彩》初心者さんのための独学ではじめる厳選道具一式

 

⦅透明水彩の使い方⦆色彩で陰影を作る

『 Harmony 』<透明水彩画> by NORi

グリザイユ技法では
陰影の様子を灰色や茶色でモノクロ写真のように
表現しますが、

もちろん
鮮やかな色彩の濃淡で
陰影を表現するという手もあります。

 

陰影の暗さに注目するというよりは、

まずは
光の明るさに注目することで

色彩が広がる世界からの延長線上に
陰影を捉え

物の立体感を表現しようという方法
と言えるかなと思います。
 

色には無彩色有彩色の2種があり、

白・灰色・黒は色味(色相)がないため
無彩色となります。

それ以外の色は全て有彩色です。

【色彩科学】有彩色とは|色の種類と三属性-色相・明度・彩度

白・灰色・黒という無彩色は
明度だけの世界です。

まさにモノクロ写真のように
明るいところから暗いところまでを
白・灰色・黒だけで特徴づけることが
できるからです。
 

しかし
色味(色相)のある
あらゆる有彩色にも明度があります。

明度の高い色を用いれば
明るい表現が可能で、

明度の低い色を用いれば
暗い表現が可能です。
 

では
色の明度とは何で決まるのでしょうか。

それは
光の反射率で決まっています。

《色彩科学で紐解く絵画》3原色と補色|ゴッホの「ひまわり」

絵の具の混色で考えれば
白を混ぜるほど
光の反射率(明度)は高く、

灰色や黒を混ぜれば
光の反射率(明度)は低くなります。
 

透明水彩では
水を使って絵の具を薄くすることで
紙の白さを活かすことが出来るので

光の反射率を大きく下げることなく
明るい画面を作ることができます。
 

しかし、
色相の異なる色同士を混色すれば
色の反射率は下がり
色の濁りが出てきます。

【色彩科学】黒く濁らない混色のコツ。~減法混色と三原色~

グリザイユのように
一色だけで陰影をつけるのではなく

明るく鮮やかな色彩で
陰影を表現するには、
 

このような性質をふまえて、

まず最初は陰影に囚われず
絵全体の印象を作るようなイメージで
透明感のある鮮やかな色で
水をたっぷり使い薄く塗り重ねていく

というのが
基本の塗り方になるかなと思います。

透明感のある鮮やかな色とは
彩度の高い純色に近い色相です。

【色彩科学】彩度とは|鮮やかな色が美しい水彩画を描くキモ

また
混色や重ね塗りの際には

似たような色相を使って
できるだけ光の反射率を下げず

色の濁りを抑えた状態で
物の立体感を表現していきます。
 

それが終わってから

それらの明るく鮮やかな色彩を使って
最後に陰影を塗るという順番です。

【果物の水彩画】真っ赤な柘榴(ザクロ)と色彩科学のお話

強い光を感じるシチュエーションでは
陰影は真っ黒に見えます。

ですが、
明るい色調で描かれた絵に
いきなり黒で陰影を塗るのは
コントラストが強くなり過ぎて

ここまで塗り重ねてきた色彩の美しさを
崩してしまう場合があります。

それに
色彩の美しさで魅せたい透明水彩画に
黒を使ってしまうのは
少しもったいない
気がしますね。
 

そこで
そのまま黒を使うのではなく、

作品に合った暗い陰影の色を
混色して作る
という方向性を探ってみたいと思います。
 

陰影の色の作り方としては、

まず
陰影をつけようとしている
モチーフのメインの色

もう1色、絵の中で使っている色
(メインの色から離れた色相の方が
暗くなりやすいです)

の2色を選びます。
 

例えば
赤い林檎の『陰』には
赤と緑(茎の色にも使う)の混色

黄色レモンの『陰』には
黄色と赤(芯の色にも使う)の混色

などのような感じです。
 

その2色を混色することで
画面の雰囲気を壊さない調和のとれた
暗い陰影の色を作ることができます。

彩度の高い色同士の場合は
混色しても
比較的濁りの少ない
綺麗な影色が作れます。

 

何パターンか試し塗りをして
イメージに合った色の組み合わせを
見つけておくと良いです。

他の作品で
似たような色合いのモチーフを描く時にも

自分で見つけた陰影の色は応用が効くので

色見本と一緒にメモを取って
色をどのように作ったかを
残しておくと便利です。
 

⦅透明水彩の使い方⦆陰影を塗るコツ


モチーフ上の『陰』と
モチーフから離れたところに落ちる『影』
とでは暗さが異なります。

絵を描く前に
最も暗い場所はどこか
をよく観察しておくことは大切です。

 

実際に絵を描いている時には

少しずつ明暗の調子を徐々に整える
という方法が最初は失敗しにくです。
 

日本の四季を考えると
真夏でない限り
明暗の調子が比較的なめらかですが、

真夏や南国の風景などは
明暗の調子がはっきりしてきます。
 

明暗の調子がはっきりした絵の場合
明るさが際立つ陰影の塗り方が
大切なポイントになります。

南国の風景などは
陰影の色や形が鮮明です。

強い光には強い陰影が出来るからです。
 

陰影の形をはっきり
陰影の色も強くすることで

光を感じる力強い絵になります。
 

最も暗い場所の色の強さが
光の明るさを際立たせます。

 

暗く濃い色を塗るのは
勇気がいりますが、

薄い色から徐々に濃い色へと
少しずつ濃さを強くしていくのが
失敗しにくい方法です。

 

透明水彩では
ひと塗り、ひと塗りが
仕上がりに影響して
効果を発揮しますから、

丁寧に少しずつニュアンスを変えながら
陰影の強さを深めていけると

透明感のある奥行きと自然な陰影が
表現できます。

【果物の水彩画】真っ赤な柘榴(ザクロ)と色彩科学のお話

一方
曇り空の風景や
穏やかな光での場面を描く場合
には

陰影の形を強調せずに
ぼかしながら
なだらかなグラデーションで
陰影を塗っていくと

ふんわりとした明暗の調子を
表現することができます。
 

陰影の形と
陰影の色の濃さで

光の強さや雰囲気が立ち現れてくる
といった感じですね。

【鳥の水彩画】定番3色を使わないで “すずめ” を描きたい。

 

⦅透明水彩の使い方⦆まとめ

  • 『陰』はモチーフ上の暗い部分で、『影』はモチーフから離れた所に落ちる暗い部分です。
  • グリザイユ技法を使って先に陰影を塗っておくことで、立体感のある絵を簡単に描くことができます。
  • 濃淡やぼかしを使った透明水彩ならではの色彩豊かな絵の表現を強調したい場合は、使った色を混色して最後に陰影を塗る方法がお勧めです。
NORi
私達が普段
物を見ることができるのは
【光】があるからですね。
 

その光の道筋を考えることが
立体感の理解を
深めてくれそうです。

【透明水彩の塗り方動画】絵の具の塗り方・技法・スケッチ