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減法混色と三原色|絵の具が混ざっても綺麗な色を目指す!

    
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減法混色と三原色|絵の具が混ざっても綺麗な色を目指す!

こんにちは、NORi です。
今回のテーマは『減法混色と三原色』です。私は旅先で現地の画家さんに絵を習うことがあるのですが、その時に目の当たりにしたのが混色のテクニックの素晴らしさでした。

何色かの絵の具だけで思い通りの色をつくり出して、複雑な色味を絵の中で自由に表現する技術には惚れ惚れしました。そこで今回は、絵の具の混色の際に役に立つ『減法混色の原理』についてまとめてみたいと思います。混色の基本を活用して益々深みのある作品に挑戦できますように!

NORi

【減法混色と三原色】- 色の三原色と CMYK のはなし

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絵の具で紫色を作りたい
と思ったときには

赤色と青色を混色しながら
赤と青の割合を変えることによって
色々な紫色を作ることができます。
 

また、
緑色を作りたい場合には
黄色と青色を、

茶色を作りたい場合には
黄色と青色と赤色を

それぞれ混色することによって
理想の色に近づけていけるはずですが、
 

それでは
黄色・青色・赤色を作りたい場合には
どうすれば良いのでしょうか。

 

これらの3色は『原色』と言われ、

他の色を混ぜて作ることが出来ない色
として知られています。
 

色素の開発の歴史は古く
昔は天然の鉱物や植物などから
抽出されたものを使ったり、

合成技術の向上に伴い
多くの色素が開発されてきました。
 

基本となる三原色のみならず
多彩な色合いが揃った絵の具を
私達は手にすることが出来ます。
 

本当に繊細な色が揃っていて、

画材屋さんに並ぶ
美しい絵の具のグラデーションは
圧巻ですね。
 

実際には絵の具を混色していくと
色が濁ってしまい

鮮やかで綺麗な色を混色で作るのは
なかなか難しいことです。
 

理論的な混色は
色と色の足し算ですが、

実際の絵の具の色材(顔料)というのは
様々な原子が結合した
形のある物質です。
 

異なる物質としての2つの色材が
混ざり合ったとき、

物質としての物理的な相互作用や
化学的な反応も起こり得ます。
 

色彩だけを論じた混色法は
現実にはうまくいかないことが
多いのです。

 

そのため絵の具の開発は
メーカーによって様々な特色があり

色味や発色など独特の美しさを
放っています。
 

よく使う色や気に入った色は
絵の具で用意しておくと、

自分ではとても作れないような
『彩度』の高い色が手に入り
安定した発色の鮮やかな絵を
描くことができます。


 

色の混色においては
色の彩度を下げることはできても

より高い彩度の色を
混色で作ることはできません。

 

そのため
綺麗な色を混色で作るためには、

基本の三原色は
できるだけ高い彩度の色を選ぶ必要があります。
 

そこで減法混合では
次の色を三原色として選んでいます。

  • 青色 → Cyan (シアン)
  • 赤色 → Magenta (マゼンタ)
  • 黄色 → Yellow (イエロー)

英語表記の頭文字を取って
CMYと呼びます。

 

理論的にはこの CMY だけで
あらゆる色を表現できるはずですが、

実際には黒を綺麗につくるのが
難しいという現実があります。
 

そこで CYM に

  • 黒色 → Key plate (キー・プレート)

を加えて CMYK の4色を
減法混合では採用しています。
 

※ キー・プレートという言葉の意味を調べてみました。

少なくとも昭和の中頃くらいまでの印刷業界では、カラー印刷のために CYMKの4色のアナログ製版(プレート)をつくり、それを重ねて刷ることでカラー印刷を実現していました。

その4色のモノトーン製版の着色は大変な技術力が必要な職人の腕の見せ所で、4色の製版の中でも特に黒色を担う『墨(スミ)版』が最も重要な製版(キー・プレート)と言われていました。そのため、CYMK の K は、印刷の仕上がりの要となる黒色(スミ版)という意味で、キー・プレートと呼んでいるようです。

ここからは
混色の理論的な枠組みについて
ご紹介したいと思います。


 

【減法混色と三原色】- 減法混色(Subtractive Color Mixture)の原理


色の混色メカニズムを
理論的に説明したものが
減法混色の原理です。
 

減法(Subtractive)とは、

光の引き算によって
色が作られるという意味です。
 

私達は色を
光の波長で捉えています。
 

目に飛び込んでくる光の
波長帯によって

目の奥にある視細胞の反応が変わり
その刺激が脳に送られ
色を認識しているのだそうです。
 

たとえば
赤色のセロファン紙
太陽光を遮ってみると、

私達の目には赤色が届きます。
 

これは、
太陽から届く
全ての可視光帯の光から

セロファンが
赤色以外の波長の光を吸収し、

赤色帯の波長だけがセロファンを通過して
私達の目に届くためです。
 

このセロファン紙に
さらに青色のセロファン紙
重ねたらどうなるでしょう?
 

青色のセロファン紙は
青色の波長帯の光だけ
透過しますから、

すでに
赤色のセロファンを通過してきた
赤色帯の中に含まれる

青色帯にも含まれる光の波長だけが
通過することになります。
 

その結果、
赤色帯と青色帯の重なった
紫色の波長帯だけ
目に届きます。
 

色の違うセロファン紙を
重ねれば重ねるほど
通過する色の波長帯は狭まり、

ついには
どの色も通過できなくなり真っ黒になってしまいます。

 

このように
混色によって生まれる色というのは、

太陽光を通過する光の波長帯が絞られる
『光の引き算』によって作られるので、

減法混色といいます。
 

絵の具の色の混色も同じで、

絵の具の色の物質に
太陽光が吸収され、

残った光の波長帯だけが
反射して私達の目に届きます。
 

絵の具やセロファンといった
物質によって色を混色する方法は

基本的には全て減法混色に当てはめて
考えることが出来ます。


 

【減法混色と三原色】- 補色同士を混ぜると黒になる


色の関係性を表す言葉として
補色』というものがあります。
 

減法混色の原理から、
色は光の引き算で作られます。

ある固有の色をもった色材は
太陽から降り注ぐ光(白色光)のうち
ある決まった特定の波長帯の光だけを
吸収します。
 

そして、
吸収されなかった残りの波長帯の光が
私達の目に届き、
その光の波長によって色材の色を
私達は認識することになります。
 

このとき、
ある色材が吸収しない波長帯の光を
逆に完全に吸収する特性を持った
色のことを補色といいます。

 

補色関係にある色を混色すると
(あるいは重ねると)

その色に当たった太陽光は完全に吸収され
そこから光が私達の目に届くことは
ありません。

そのため真っ黒に見えます。
夜が暗いのはこのためです。
 

たとえば、
赤色のセロファン紙(A)が赤く見えるのは

赤色のセロファン紙(A)が
赤色の波長帯以外の光を吸収し、
赤色の波長帯の光だけを透過させるためですが、
 

その透過した赤色の波長帯だけが
私達の目に届き、
そのセロファン紙(A)が赤色だと
私達の脳が認識することになります。

ここに
赤色の波長帯の光だけを吸収する
セロファン紙(B)を重ねたら
どうなるでしょうか。

 

すでに赤色のセロファン紙(A)を
通り抜けてきた赤色帯の光が
次のセロファン紙(B)に完全に
吸収されるため、

通り抜けることができる光が
無くなりなります。
 

そうすると私達の脳は
黒色として判断します。

 

では、赤いセロファン紙(A)を
すり抜けた赤色の光を
完全に吸収するセロファン紙(B)の
色とは何色でしょうか。

その答えは青緑色です。
 

よって、
赤色青緑色は補色関係にあることが
わかります。

同様にして、
黄色と紫色なども補色関係です。
 

また、
前述した色の三原色

  • イエロー (Yellow)
  • シアン (Cyan)
  • マゼンタ (Magenta)

も補色関係にあり、
 

これら三原色を当量ずつ
充分暗くなるまで混ぜると
になります。

 

しかし現実には、
色材は固有の物質であり
色彩理論以外の現象を含むため、

三原色を混ぜても
完全な黒を作ることはできません。

 

そのためプリンターなどには

  • 黒色 → ブラック (Black)

が用意されています。
 

このように
実際の絵の具の混色は

理想的な減法混色原理を
再現することはできませんが、
 

補色同士の色を混ぜれば
ぐんと暗い色が作れたり

似たような色を使っている限りは
色は濁ったり暗くなったりあまりしない
などの

再現性のある色彩の特徴を
説明することができます。

 

少ない手数で理想に近い色を作ったり
安心して色を塗り重ねることができるので

やはり理論的な枠組みがあることは
大変素晴らしいことだと思います。


 

【減法混色と三原色】- 色の正体 ~色が見える仕組み~


私達が色を認識出来るしくみ
というのは、

多くの事が分かっています。
 

例えば、

私達の身の回りは
色で溢れかえっているように見えますが、
 

実は、
それ自体に色がついているわけでは
ありません。

 

ただ、
【光】が目に飛び込んできているのです。

 

しかし、その【光】にも
やはり、色はついていないのです。

 

・・・・

一体、何が起こっているのでしょうか。
 

私達は真っ暗闇では
何も見ることができません。
 

光が無ければ何も見えないのです。
 

何かが見えるということは、

目に入ってきた【光】を捉えた
ということなのです。
 

これが、
何かを見るための
私達の最初の仕事です。



 

■ 見えるということ

目に入ってきた【光】を捉えるとは、
どのようなことでしょうか。
 

ここからは

目に見えない
小さな分子の世界のお話しです。

少し覗いてみましょう。
 

瞳孔から入った【光】は
水晶体や硝子体を通り、

眼球の奥にある網膜上に
像が結ばれます。
 

入ってきた【光】の強さと
その【光】のもつエネルギーの違いを

網膜に分布している視細胞が検出し、
その情報を電気信号として脳に送ります。
 

脳に送られる信号は、
まだ【光】の情報です。
 

その光に【色】付けするのは、
この先にある脳の仕事です。

 

もう少し、
目の中を見てみましょう。
 

目に入ってきた【光】を検出しているは、

【光センサー】の役割を担っている
網膜に分布している視細胞です。
 

さらに小さな世界に入っていくと、

その視細胞は
【①レチナール】と呼ばれる色素が組み込まれた
【②オプシン】と呼ばれるタンパク質
で出来ています。
 

光が目に入り、網膜に到達すると、
なんと、
【①レチナール】の構造が瞬時に変化します。
(光異性化反応)
 

この反応がまさに、
【光センサー】が光を捉えた瞬間です。

 

この【①レチナール】の構造変化
を受けて、

引き続き
【②オプシン】の構造も変わります。
 

この一連の変化が
電気的な刺激となって、

最終的に脳に伝わり、
 

私達は
【光が来た】ことを

認識するのです。


 

■ 光から色へ。


ここまでは
人間が持っている

驚異の光検出システムを
ご紹介してきましたが、
 

たとえ
目が光を検出できても

それはまだ【色】が見えている
ということになはならないのです。

 

つまり、
色というものは

物そのものに付いているわけでも
光に付いているわけでもないのです。
 

では、
どこに【色】はあるのでしょうか。
 

目の中ではもう少し
複雑なメカニズムが働いているようです。
 

まず、
私達はそもそも
なんでもかんでも見えるわけではありません。

 

見ることのできる光の範囲
というものがあり、

それが可視光と呼ばれる光の領域です。
 

光の波長(エネルギー)の単位で表すと
約 400 ~ 800nm くらいまで
と言われています。

[ ※ nm(ナノメートル) が、
光の波長を表す単位]  

この光の波長域は、
私達の住むこの地上に

太陽からの光が一番強く降り注ぐ
波長領域とちょうど重なっています。
 

太陽光のエネルギーを
最大限に利用することに特化する形で
私達の視覚が進化したと考えられています。

 

明るいところで
私達の視覚を担うのは、

錐体と言われる視細胞の
3 種類の【光センサー】です。

  • Long(約560nm の光を検出しやすい細胞)
  • Midle(約530nm の光を検出しやすい細胞)
  • Short(約430nm の光を検出しやすい細胞)

 

3 つそれぞれが検出しやすい光の波長を
分担しています。



 

■ 脳が信号を受け止める。

3 種類の【光センサー】から

「光を検出しました」
という信号が

脳へ送られます。
 

脳では次のような処理が
行われることになります。
 

  • Long からの信号
    → 黄色~赤色として認識(約560nmの光)
  • Midle からの信号
    → 緑色として認識(約530nmの光)
  • Short からの信号
    → 青色~紫色として認識(約430nmの光)

このようにして、
目が受け取った【光】の信号は

最終的には脳によって
【色】に変換されることになります。。
 

不思議なことに、

【色】というのは
頭の中で生まれているんですね。
 

脳によって【色】づけされている
ということです。

 

実際には
光の【波長】だけではなく、

光の【強さ】も検出しています。
 

光の【強さ】に敏感な視細胞は
桿体と呼ばれています。

桿体の方は、
光子1個でも反応するといわれる
究極の高感度光センサーです。
 

目に飛び込んできた
【光】の波長と、強さは、

いくつもの【光センサー】
(錐体および桿体視細胞)
の出力に変換されて、

脳に伝達されます。
 

その伝達の組み合わせによって

脳は数百万種類の色を
識別することができると言われています。

 

このように、
光の違いを識別できる感覚のことを

色覚】というそうです。



【減法混色と三原色】- まとめ

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『 ブーゲンビリア 』〈透明水彩〉by NORi




  • 補色同士の色を混ぜれば黒に近い色を作ることができます。
  • 似たような色は混ぜてもあまり色は濁ったり暗くなったりしないので、比較的綺麗な色を保って塗り重ねることができます。
  • 色の混色メカニズム(減法混色の原理)を知っておくことて、少ない手数でできるだけ鮮やかで美しい色を塗ることができます。


減法混色の原理を学ぶと自然の働きとしての色彩を科学的な視点で整理できるとともに、絵の具の開発を続けてきた方々の努力と様々な画材の発展を支えてきた長い芸術の歴史に深い感謝の念が沸いてきます。

NORi




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